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  • デジタル主権の話

    最近、欧州の一部の自治体で、WindowsやMSOfficeからLinuxやLibreOfficeに乗り換える動きがあるという報道がチラホラ見られました。

    こういう動きって以前にもありましたが、全世界どころか欧州内でも広がることはなく、結局みな便利な方に流れるものなのですが、今回に関しては、直接的な原因がありました。

    トランプ政権による圧力により、国際司法裁判所の関係者のMicrosoftのメールアカウントが停止されてしまったという事実です。親イスラエルのトランプにとって、イスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を発行したICCは制裁を科す対象だということです。

    アカウント停止自体は他のGAFAなどに広がっているわけではありませんが、欧州各国当局にとっては、アメリカのIT企業にデジタル的権利を握られていることが改めて危険なものだという認識が生まれたのでしょう。そしてこの動きは、デジタル主権という言葉で語られています。アメリカを批判する立場になる場合は、アメリカのデジタルサービスから離れる覚悟が必要だということでもあります。もちろん、莫大なライセンス料金を節約したいという気持ちもあるでしょうが、導入するサービスは無料でも、サポートを任せるIT企業(もちろん欧州の)への支払はあるでしょうし、利用する職員がどれだけ頑張れるかという問題もあるので、そう簡単にはいかないでしょう。

    私自身も最近いろいろホームサーバにハマりだして、LinuxやNextCloudやLibreOfficeを使うようになりましたが、じゃあ日本の自治体や大企業なんかもデジタル主権のため、それらを使うべきかというと、そこまで主張する気にはなれません。第一、まだ私はWindowsマシンを手放せませんし、Androidスマホも使用し続けるつもりです。

    パソコン、サーバはともかく、スマートフォンのデジタル主権はかなり難しい問題です。アメリカと揉めた中国の方が、HUAWEIのHarmonyOSによってもしかしたらPCもスマホもデジタル主権を獲得できるようになるかもしれません。既にSNSや検索では、グレートファイアウォールによってアメリカ製サービスを遮断するという強硬措置によって実現していますし。

    欧州各国はどこも1バイト文字を使っていて、日本語や中国語のような入力システムを必要としない点も、Linuxなどへの移行がしやすい原因の一つでもあると思います。実際、私は未だにATOKから離れられず、LinuxでもMozc+Fcitxによって日本語入力が出来るとはいえ、メインマシンを完全にATOK離れに踏み切る覚悟はありません。昔あったATOK for Xが復活してくれれば良いのですが、キーエンス傘下となったジャストシステムにそんな赤字覚悟のプロジェクトをやってくれる余力も無いでしょう。

    なんだかんだ言っても、現在、日本語を使用したデジタルサービスを最も快適に利用出来るのは、Windowsであることは誰も否めないはずです。別にATOKを使っていなくてもです。この辺は、1バイト文字文化圏と、2バイト文字文化圏で差があるのではないでしょうか。

    中国がどこまで非アメリカ製サービスだけでやっていけるのかは、日本人にとって、日本におけるデジタル主権の可能性という観点からも見物ですね。