Appleの戦略的転換の必要性(iPhoneを安くしてください)

 先日、SamsungとHUAWEIが相次いで折りたたみスマホを発表しました。べらぼうな値段なのですぐに普及するものではありませんが、スマートフォンにおける最新技術に関して、iPhoneを要するAppleがその二社に先行されている感は否めません。Appleは頻繁にアップグレードや新商品を行う企業ではありませんので、今年折りたたみiPhoneが出ないとも限らないのですが、iPhoneに関しては事前にリーク情報が出回るのが最近の常ですから、当面は折りたたみiPhoneの発表は無さそうです。

 iPhoneは端末価格が高額であることがこれまで、新興国市場での低価格Android端末に大きく市場を奪われてきた原因でしたが、ハイエンド端末としても機能面で競合機種に劣ると見なされれば、先進国市場でも益々シェアを落としていくことになります。現時点でも日本以外の先進国市場ではiPhoneは劣勢でしたが、もしかすると日本でも苦しむようになるかも知れません。

 AppleがiPhoneに高値を付けているのは、もちろん理由があってのことです。品質(本当に高質かどうかはともかく)維持のためだけではなく、iOSの開発費用も必要ですし、世界中に展開するアップルストアの維持費も必要です。また株主への配慮も必要ですから、高収益企業であることを証明し続けないといけません。Appleは株主配当を行いませんが純利益を積み上げ続け、たまに自社株買いを行って株価を上げることで株主に利益を還元しています。上場企業である限り株主を気にするのは当然ですが、今のAppleは株主を気にしすぎのような気もします。そのためにiPhoneなどの値付けを高額にせざるを得ません。その結果、販売台数が当初予想より減り、かえって市場で株価が弱気になる材料を提供してしまっています。

 もうAppleはスマートフォン単体でのハイエンド競争の最前線で、SamsungやHUAWEIと戦い続けるべきではないと思います。画面パネルや半導体の開発・生産システムを抱えるSamsungはグループ全体での利益を考えればGalaxyをそこまで高額に設定する必要がありません。HUAWEIにしても、先進国よりも安いが大量に顧客がいる自国で売れることを考えると他国での値付けを高額にしなくても利益を確保できます。一方Appleは生産拠点を自社で抱えないことで低リスクで高リターンを効率よく得られましたが、コモディティ化したスマートフォンにおいて限界が見え始めました。ハードウェア生産で他社に依存していますから原価を抑えるのが難しいためです。Android端末を開発してOEMやODMで安く作ったロットを売り切るだけでいいスタートアップ企業は、コモディティ化したスマホ分野で充分利益を上げられます。しかしAppleにはそれは出来ません。
 いわば、今のiPhoneは少しずつ、かつての日本家電業界におけるテレビ事業のような状態になりつつあります。このままだとジリ貧ですが、見方を変えてスマートフォンだけではなく、自社の強みを生かせる形で売上・利益を確保するようにすべきです。

 Apple製品の強みは、ほぼ全ての商品・サービスが連携して一体化している点です。デザイン的にiPhone・iPad・MacBookなど一目でApple製品だと分かるようになっているだけではなく、iPhoneで書いているメールをMacで引き継いで書けますし、iPadで開いていたウェブページをiPhoneでも1タップで開くことが出来ます。Apple以外の企業の製品でもそういったことが出来ないわけではありませんが、標準機能で可能なApple製品ほど簡単かつシームレスに出来るわけではありませんので、これは間違いなくAppleの強みと言えます。

 iPhone・iPad・mac・Apple Watch・AirPodsなどのハードと、macOS・iOS・AppleMusicなどのソフトと、各地のアップルストア・オンラインストアの販売チャネルで形成される強固なエコシステムの全体から広く、顧客から利益を得る方針にすれば、各商品の単価を下げることも出来るでしょう。
iPhone単体の単価も下げることができ、かえってSamsung・HUAWEIなどの競争相手と値段で勝負できるようになります。そうすれば販売台数を増やせますし、iPhone所有者にiPhoneだけではなく他のApple製品にも手を出してみようか、という気にさせることが出来ます。現在は、一番の目玉商品であるiPhoneのみで顧客から多額の利益を得ようとするから高額な値段設定にせざるを得なくなるのです。その戦略は変えた方が良いでしょう。

 逆にサムスンやHUAWEIはそこまでのエコシステムは持っていません。AndroidはOSとして順調に発展してきてAndroidスマホもver.4.4(KitKat)あたりからiOSと張り合えるようになりました(ちょうどGoogleがNexus5を出したころです)が、Androidタブレットは低調なままです。市場においてiPadほどの影響力を持っていません。タブレット端末はiPadもしくはWindows端末の2択になりつつあります。スマートウォッチ市場も同様で、Samsungが踏みとどまっているくらいで、スマホと連携したスマートウォッチとしてはApple Watchの一強です。パソコンとの連携に関しては、MicrosoftがWindowsPhoneを諦めた一方でWindows10とAndroid端末の連携がやりやすくなりました。しかし当たり前ですがiOSとmacOSほどの連携は出来ていません。スマホ・タブレット・時計・パソコンをメーカーバラバラで購入して、連携が限定された(もしくは存在しない)状態での使用しかできません。この点にAppleの企業としての戦略的価値があります。

 さらに言うと、Android端末のメーカーは自社でOSを作っているわけではありません。WindowsPCのメーカーも同じです。ある意味、GoogleやMicrosoftに依存していることになります。AndroidやWindowsに自社の方針を反映させるためには、GoogleやMicrosoftと緊密な関係を結ぶ必要があります。Microsoftは北京にも開発拠点を置いていますので、中国政府との関係は良好ですが、Googleはそのサービスを中国国内において遮断されています。Android自体はオープンソースですので、GoogleがAndroidを中国メーカーに使用を禁止させることは出来ませんが、例えばHUAWEIが最新の技術を開発してAndroidの機能として使えるようにするところで問題があるかも知れません。そういうことはAppleの場合では社内の折衝だけで済みますから大きな差があると言えるでしょう。

 結論としては、AppleはiPhoneだけで多額の利益を確保しようとするからかえってシェアを落としているので、Apple全体のエコシステムの中で広く浅く利益を得ることで各分野でのシェアを増すことが出来るはず、ということです。さらに今後は、家電、IoT、電気自動車などとの連携を取ることになるでしょうし、その点でもAppleは自社で完結できれば非常に有利なはずです。スマホもパソコンもあるいは他の分野でもOSレベルを他社に依存しているSamsung・HUAWEIはAppleほど幅広く各製品・サービスを統合することは出来ませんから、さらにコモディティ化したスマホやITガジェットにおいて低価格競争に苦しむことになるでしょう。

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