テレビCMだろうとウェブ広告だろうと、目にした広告物全てが嘘偽り無く真実を伝えていると思ってしまう人は、探すのが困難なくらい絶対的に稀だと思います。
100%ではないにせよ、ある程度は正しくて、ある程度は嘘や誇張混じり程度かなというくらいに信用している人が大半でしょうか。100%全部嘘とまで断言できる人もまた稀でしょう。
とは言っても、実際に見た広告のうちどれがまともでどれが嘘まみれかを判断するには、その人個人の知識や感情に大きく左右されてしまいます。誇大広告で被害が出るような事件を見れば、広告なんて嘘ばっかりという印象になりますし、感動するようなCM、話題になるような広告を見ると称賛やバズフィードが集まります。
昔、小さいながらも会社経営していた父が
「テレビCMを出している会社なんてロクなもんじゃない」
みたいなことを言っていたことをかすかに覚えています。子どもの時はキャッチーで楽しいCMに対しては好意しかなかったので、そういう父の発言を理解出来ませんでした。
しかし、いざ大人になってみると、全てではないにせよ、ロクでもない企業のロクでもない広告は確かに分かります。
狼少年ではないですが、広告自体の信頼性を失わせるのは広告自身でしょう。大半の人が100%信じていないにしろ、明らかに問題がある広告ばかりになれば、誰も信用しなくなります。
特に今はネット広告華やかなりし時代です。そしてその弊害も当然あって、個人の嗜好や履歴を過剰に追跡して、ターゲティングされた広告ばかり目にするようになると、うんざりして嫌になるか、のめり込んで何も考えなくなるかどちらかでしょう。
20世紀から大きく肥大化した広告業界は、ともすれば世間や政府から頻繁に叩かれる存在になりましたが、21世紀に入るとネットCMとそれに関わるIT企業は毎日のように政府やメディアから糾弾されています。
GAFAMと呼ばれる、Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoftの5社は広告収入と広告出稿での金額も半端ない多国籍(無国籍)企業となりましたが、その分どこの国でも消費者との向き合い方に非難を浴びています。
この5大企業のうち、創業者がまだ業務運営に関わっているのはAmazonのベゾス氏とFacebookのザッカーバーグ氏だけ、ベゾス氏も退任を発表しましたので残るはザッカーバーグ氏のみとなります。
そして、CMや個人情報関係で一番批判されているのはそのFacebookですが、創業者がまだ若く、広告や個人情報に対する考え方が旧世代とは異なるのが一番大きな原因なのかも知れません。物心ついたときにはパソコンが普及していて、すぐにインターネット時代が始まった彼にとっては、個人情報は守るものというよりも利用するものと思えているのかも知れません。
逆にAppleはGAFAMの中では個人情報保護に熱心な立場です。新しく発表されたiOS15ではプライベートリレー機能が搭載され、IPアドレスや閲覧先のサイトについて暗号化されて秘匿できるようになりました。その代わりにキャリアや回線事業者独自の割引サービスなどでウェブ通信の中身の把握が出来なくなってしまい、プライベートリレー機能をオフにすることを推奨してしまう形になったのは皮肉ですね。
日本国憲法第21条に規定されている「通信の秘密」は元々は電話の盗聴や手紙(私信)の検閲を防ぐためのものでした。今では電波法や電気通信事業法で具体的に守られる権利ですが、IT技術の格段の進歩が法律を置き去りにしています。
今回のプライベートリレー機能によって消費者が安い携帯料金を享受出来なくなる問題は、通信の秘密と消費者の権利保護の観点から見ると、消費者側に通信の秘密を諦めさせるのは結構重大な問題になりそうな気がします。
なんにせよ、広告は嫌われる立場になりました。だからと言って、広告が全く無い世界がフェアな世界かというと、それはそれで微妙です。もし広告が存在しなければ、自分が利用したらものすごく便利な物やサービスを、ほとんど全ての人が知ることが出来なくなります。誰もが見かける物・知っている企業しか売れなくなるとなると、どう考えても中小企業が新興企業にとっては不利でしょう。
だからこそ広告業界には、出来るだけ
「邪悪になるな」
というGoogle創業者のお題目が必要なのだと思いますが、いかにして狼少年を消費者に信じさせるかということに熱心な感じがするのは、私だけでしょうかね。
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