障がいや病気あるいは怪我の場合に限ったことではなく、「これが苦手」「あれが出来ない」、ということはたいていの人にあると思います。能力的なものもあれば向き不向きとか、好き嫌いといったことでもいいですが、「出来ないとダメ」と一般的に言われるようなことが、「出来なくてもいい」という時代になりつつあると思います。
例えば、私は自動車の運転が苦手です。免許は持っていますが現在は全く運転していません。完全なペーパードライバーです。一昔前なら「男のくせに運転できないのか」とか言われていたかも知れませんが(これはこれでジェンダー的にアレですが)、交通機関が発達した都会で住む分には特に不便は感じません。車が必須な地域で住むのなら大変かも知れませんが、幸いなことに昔も今も車の運転をしないことで困ることはありません。「時代が自分に追いついてきた」とかいうわけではないですが、今は車を所有することが必須でもステータスでもなくなりました。逆に自動車所有にかかる諸経費が無い分、余裕があるかも知れません。
あと、手書きの文字が下手です。個人的には汚いとまでは思っていませんが、まあ、下手なのは認めます。今の時代では手書きの文字を書く機会は、キーボードで打つ(あるいはスマホのフリック入力)と比べると文字数でいうと100分の1にもならないですから、あんまり困ることはありません。
テクノロジーの発展によって、生活は便利になりました。おそらくほぼ全ての人は実感出来ることだと思います。テクノロジーは困難を克服するために存在します。そしてその困難が困難であることを認識できるのは、何でも出来る人ではなくて、「何か」が「出来ない」人のはずです。
何か困ったことに出くわした時に、それをよりスムーズに誰でも解決できるようにするには何が必要かということは、器用な人よりも不器用な人の方が見つけやすいはずです。器用な人は既存の方法や手段で結局こなしてしまいますから、問題点には気付きづらいのです。
そして、今後は何でもこなすAIや自律ロボットが普及したら、器用な人より不器用な人の方が役に立つかも知れません。コンピュータが既存の方法で解決してしまうので、問題点には気付きづらいという問題があるはずです。もちろん、あらかじめ、より短時間で、より効率よく解決する方法を探す、とプログラミングしておけばいい話ではありますが、事前に想定できない困難さは克服どころか見つけられないでしょう。
コンピュータが得意な分野において、人間は絶対に勝てません。
コンピュータは故障しない限り失敗はありません。逆に人間は体調万全でも失敗することがあります。
これからAIやロボットが社会にあふれるようになったら、間違いや失敗はなくなり効率が良い社会になるでしょうけれど、失敗から生まれる革新が出てこなくなるかも知れません。
そうなると、出来ないことがある人間、思いがけない失敗をする人間の方が価値が出てくるというか、わざとではなく本当に失敗する、つまづく、上手くいかない、不器用、ということがむしろ能力と見なされるのではないでしょうか。
ちょっと誤解を招きかねないかも知れませんが、例えばディスレクシアの人を敢えて雇用している出版社が、その人にこの文章や文字は読んで理解出来るか、読みやすいかをチェックしてもらう仕事を与えるとしたら、その「ディスレクシア」という『特徴』で稼いでいると言えます。出版社も読む人を増やせますし、元々読める人もより読みやすくなります。ディスレクシア向けの雑誌なんかがあれば面白いのではないでしょうか。
10歳の少女が書いたディスレクシア(識字障害)についての詩がすごい
https://www.lifehacker.jp/2019/03/poem-for-dyslexia.html
上記リンク先の詩にあるように、まさに「 a talent for words(言葉の才能)」です。
出来ないことが悪い、ではなく、出来ないことは他の人とのちょっとした違い、という解釈をその人やその周りの人が出来るのならば、もう少し暮らしやすい社会になるのではないでしょうか。
そしてさらに、出来ないことを特徴として、違った観点から物事を見ることが出来る一種の才能と見なされる時代が来るかも知れません。
「アスペルガーは才能」ノーベル平和賞にノミネートされた発達障害の少女が投げかける。障がいとは何かを
https://www.huffingtonpost.jp/entry/greta-thunberg_jp_5caca7e3e4b02084ce902d79
このハフィントンポストの記事はまさに時代の変わり目を映し出しています。
何か出来ない人を、出来ないことを理由に排除するのではなく、出来ないがゆえに積極的に受け入れ(つまり同情や福祉的な理由ではなく)、その出来ないことを生かしてさらに社会が発展していく時代はもうすぐそこにあるかも知れません。
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