ウクライナ情勢は予断を許さない状況どころか、ロシアがルガンスク・ドネツク地域を独立国家として承認することで、事実上、武力による国境線の変更が行われることになりました。
独立した国家にいるロシア系住民の保護をお題目として、「平和維持」のためにロシア軍を同地に派遣するというのは、明らかにロシア連邦への編入を予定した行動であることは言うまでもありません。
8年前のプーチン大統領は、ウクライナ国内での騒乱によって西側世界に付くことを良しとしないロシア系住民の抗議に乗じて、クリミア半島にロシア軍を入れて支配下に置いた後、クリミア議会が国家として独立してからロシア連邦への帰属を「自ら宣言」したという経緯で、クリミア半島を手に入れました。
ロシアがこの後、ドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国という「未承認」国家をロシア連邦に組み込むことは目に見えていますが、それをNATOや国連、国際社会が止められるかどうかというと、相当に状況は厳しいと言わざるをいません。
そもそも8年もウクライナの中央政府の支配が及ばぬ緩衝地帯化していたという既成事実が重くのしかかります。その時に手を打てなかった西側の落とし物を、プーチンが今になって拾いに来ただけとも言えます。
プーチンそしてロシアにして見たら、ウクライナはロシアの勢力圏内であり、東欧諸国がNATOやEUによって「侵略」されているという被害者意識があります。
伝統的にロシアは周辺諸国から攻め込まれることを恐れます。ロシアの国が出来る前にはモンゴル帝国に蹂躙されましたし、その後も19世紀にナポレオン、20世紀にナチスドイツに深くまで侵略されました。
とはいえ、ロシア帝国・ソビエト連邦も北欧諸国や東欧諸国にがんがん侵攻していた歴史を考えると、一概に被害者というわけでもありません。
ただ、客観的な見方ではなく、ロシア為政者の主観的な見方では、ウクライナという「自分のもの」を西欧に取られる前に取ってしまえ、という理屈で動いています。
国内での反政府、反プーチン運動を抑え込み、国民の不平不満を逸らすためのウクライナ侵攻だという見方もありますが、それもロシアから見たら欧米諸国だって自国内の情勢不安を改善するために、ロシアを攻撃しようとしている、と言いたいのでしょう。
アメリカはアフガンの失敗と中間選挙を控えるバイデン政権が不安定、
イギリスはコロナ禍でのパーティー問題でジョンソン政権の存続も危うく、
フランスは大統領選挙目前でマクロン大統領が極右の候補者に押されていて、
ドイツは思想的に対称的な政党を抱える不安定な連立政権が出来たばかり、
イタリアもコンテ連立政権が崩れてドラギ政権が出来たばかり、
日本も出来たばかりの岸田政権がコロナ感染の増加の対応に苦しんでいる、
という事実はあります。
欧米諸国が政治的不安定さを対ロシアで解消させようとしている、とプーチン大統領は言いたいかも知れませんが、むしろ各国首脳はウクライナ情勢に時間を取られたくないという気持ちの方が強いでしょう。
ともあれ、この危機がどのような結末を迎えるにしても、その結果は極東情勢の未来でもあります。中国が狙う南シナ海、東シナ海、そして台湾の領有への先例になりかねません。
すでに南シナ海における中国の実力行使を止めることが出来なかったという現実があります。ロシアへのウクライナ侵攻を咎めることに失敗すれば、中国が台湾と尖閣諸島に食指を伸ばすのは時間の問題です。逆に考えれば、今回のロシアの軍事行使を中国が応援するのも目に見えています。
エネルギー関係をロシアに掴まれ、経済関係を中国に掴まれているドイツが、地理的にはNATOにおける対ロシアの橋頭堡なのが絶望的ですが、東アジアでドイツの位置にいるのは日本です。
果たして、日本は中国の野心を食い止められるでしょうか?
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