ウクライナ情勢はロシアが一気呵成に軍事的成功を収めるという点では明らかに失敗しました。とはいえすぐに撤兵することも無く、あの手この手で侵攻はつづくでしょう。
ウクライナの即時降伏の可能性がほぼ無くなったことにより、西側の心配はプーチンがブチ切れて戦術核兵器をぶっ放してくることに移りましたが、それよりもさらに懸念を呼ぶのが、プーチンが本当に正常な精神状態にあるのか、という点です。
対プーチンの願望も込みになっているのであまり鵜呑みには出来ないでしょうけれど、新型コロナ対策のために限られた側近としか会っていないというニュースもありました。
正確な情報が大統領まで上がっているのか?という見方も出来ますが、会う人間が限られるなら、適切な意見を受け入れることも難しくなります。何より、側近政治になっていれば側近に権力も情報も集まります。もしかするとプーチンが傀儡になっている可能性もありますが、どちらにせよ戦局における苦戦に関して、反対を含む真っ当な意見を聞き入れることがないことは間違いありません。
独裁者はこの点において間違いなく孤独になります。自分の指示や行動に対しての意見が全て、敵対者による政権転覆の謀略に見えてきます。もちろん民主主義国家の元首でも政争は起こり得ますが、選挙を通じての交代により平和裡に争いは終結します。しかし独裁者が死ぬ前の交代はまずもって碌なことにはなりません。つい最近のカザフスタンでも前の大統領のナザルバエフに残っていた権力は、先日の「ロシア軍」による暴動鎮圧によって消滅しました。
独裁者にだって本気でサポートしようとして苦言を呈する有能な部下はいるはずですが、その意見を受け入れられないほど猜疑心が高まれば衰亡は必至です。
王国での独裁権力は血縁によって後継に引き継がれていきましたが、現代の独裁者は北朝鮮とサウジアラビア以外では、後継者は権力内部でのパワーバランスによって決まります。後継者が前の独裁者を虐げないことを保証する中国のような国家はむしろ稀で、たいていは死ぬまでトップに君臨します。その中国も習近平からは終身独裁者になります。
ロシアの最高権力者がプーチンのままとして、これからもウクライナのみならずジョージア含む周辺諸国に敵対的であればあるほど、西側諸国のリーダーは対外的には苦慮しながら国内はまとめやすくなります。プーチンショックというのは不謹慎ですけれど。
アメリカはプーチンを褒めたトランプは批判されます。
ドイツは出来たばかりの連立政権が表立って揉めることはありません。
フランスは大統領選挙においてプーチンとつながりを持っていた極右候補は減点です。
それに何よりNATO非加盟の国が先を争ってNATOに入ることが目に見えます。ロシアに攻め込まれる前にNATOに加盟して守ってもらおうと考えるのは自然な考えですし、そうならない方がおかしいでしょう。
この侵攻によってもし万が一ウクライナの一部をロシア領に組み込むことが出来たとしても、ロシア包囲網の結成を自ら促したことになり、戦術的な勝利が戦略的な敗北を招く典型的なパターンを迎えます。
戦略的に勝つ、というか負けないためには、さっさと撤退してウクライナの一部に限定的な影響力を保持しつつ、国内での反プーチンの動きを抑え、しばらくじっとしているしかありません。
ロシアの脅威が減ればウクライナ内部で、対露過激路線と現状維持路線での対立が起きるでしょう。東部やクリミアの奪還を叫ぶ勢力と、対露戦争の泥沼には入りたくない勢力、そしてNATOとの駆け引きで一致団結は出来なくなれば、またプーチンの思惑通りに持っていけなくもないでしょうけれど、そもそもそこまで待てないから侵攻したのなら、プーチンやその後継者は、22世紀頃には歴史上のとんでもない愚か者として見下されているはずです。
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