統一ヨーロッパに対するイギリスとロシアの対応

 今、イギリスがブレグジットで大変な騒ぎになっていますが、過去の歴史を鑑みるに、イギリスの一部(というか半分)の人達がヨーロッパに吸収されることに抵抗し、反発して大陸から距離を置こうとしている心境は、そう変なものではないかも知れません。
 また、ロシアがクリミア半島の合併とウクライナ東部に対する軍事的干渉を行って、NATOに抵抗し続けているのも同じく歴史的経緯から見ると、プーチン個人のエキセントリックな対応とは言えないかも知れません。

 ヨーロッパ自身が好むと好まざるとにかかわらず、19世紀と20世紀にそれぞれ強大な権力者によってヨーロッパ全体が支配されそうになったとき、イギリスとロシア(ソ連)がその野望を阻みました。

 19世紀初頭にはフランス率いるナポレオンに対して、ロシア帝国は焦土戦術で帝国奥地に誘い込み、極寒の冬将軍によって勝利しました。その後、イギリスのウェリントン将軍が中心となったワーテルローの戦いでナポレオンは敗れ、ヨーロッパが一つになることは無くなりました。

 20世紀にはヒトラーがドイツからヨーロッパ各国を侵略し、これもまたソ連奥地での戦いに手こずり、イギリスに対して相当量の空爆を行ってもソ連・イギリス両国は戦い続け、アメリカ軍と共同でナチスドイツとヒトラー(それとムッソリーニも)を倒しました。

 そして今、イギリスがEUから離脱しようとし、ロシアはウクライナに置いてヨーロッパの東から軍事的な圧力を強めています。現在のEUはナポレオンやヒトラーのような軍事力でヨーロッパ統一を図ろうとしているわけではありませんが、ヨーロッパを一つにすることで強大化を図ろうとしている点では同じです。そして、その周縁にいちするイギリスとロシアはそこから一歩(あるいは数歩)離れて対応しています。

 イギリスはEUには加わったもののポンドを維持するためにユーロは採用しませんでしたし、ロシアはある意味ロシアのままです。ヨーロッパからの影響を良くも悪くも受けつつ、その影響力を減らそうとしつつ、逆にヨーロッパに軍事的干渉を行おうとしています。

 EUあるいはドイツなど欧州主要国は、イギリスがEUを離脱してもなんともないよ、というポーカーフェイスを保とうとしていますが、19世紀と20世紀のそれぞれ前半に起こった歴史を考えると、今回のブレグジットは静観できないと思うのですがどうでしょうか。

 はっきりいうと、イギリスとロシアの対応によって統一ヨーロッパという概念は三度破棄されるのかも知れないということです。ブレグジットによってイギリスの経済や国境管理が危機的状況に陥る、と散々言われていますが、EUやユーロ、そして統一ヨーロッパという理想は今後も維持できるのでしょうか。また、EU各国はウクライナ東部を支配しようとしているロシアに対して強硬な対応を出来ません。ロシアと本格的に揉めたら原油と天然ガスを絶たれて、燃料不足による経済的な影響やさらには単に寒さに耐えられず凍死する人が出てきます。そんなEUを見限ってさらに離脱する国が出てきたら大変ですから。

 さらにはアメリカが(というかトランプ大統領が)NATOとの距離を置くことをほのめかしています。実際に完全にNATOから離脱するとは思えませんが、アメリカ抜きのNATOがロシアとやり合えるわけはありませんから、ある程度トランプの言うことを聞くか、ある程度プーチンの言うことを聞くかしなければならないことになります。そうなるとそもそもEUという統一ヨーロッパが本当に理想なのか、という話にもなりかねません。統一しても域外の強大国に振り回されるのですから。ドイツやフランスならともかく、そこまで大きくない国はアメリカやロシアと直接重厚な関係を結んだ方がいい、という考えも出てくるのではないでしょうか。

 ブレグジットはイギリスの危機、という見方ばかりが見られますが、個人的にはEUという統一ヨーロッパの危機であるような気がします。

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