陰謀論は甘い毒

陰謀論はよく語られます。「事件・事故の真相はこうだった!」とする陰謀論、陰謀が真相だったとする説は古今東西存在していましたが、今の時代はインターネットを通じて容易に拡散していきます。

陰謀論を語る人は、
「この新説は全てのつじつまが合っていて、既存の解釈を覆すものだ!」と興奮気味に話しますが、そもそも陰謀論というのは既存の解釈を覆すように全てのつじつまを合わせて構築されるものですから、先の言葉を言い換えると、
「この『全てのつじつまが合っていて、既存の解釈を覆す』新説は全てのつじつまが合っていて、既存の解釈を覆すものだ!」
という、トートロジーであって何の意味もありません。

面倒なのは、そうした陰謀論を信じている人はその説がいわゆる「陰謀論」に属するものではなく、唯一の絶対的な真相であり、これを理解出来ない人は大馬鹿者か、この陰謀によって利益を得る人間だと決めつけてかかるところです。

どんな説にも納得出来るところと出来ないところがあるはずなのですが、陰謀論者は自説に固執し、それ以外は全て間違いとして全く聞く耳を持ちません。意見を交わす議論そのものを陰謀の一環としてさえ見なしますから、議論が成り立たなくなります。

陰謀論というのはこうあってほしい、こうあるべきだという考えを潜在的に持っている人にとって干天の慈雨のような、甘い毒として浸透します。

しかも即効性と持続性を兼ね備えた毒です。既存の解釈に納得いかない気持ちを持っている人は、それを一気に解消してくれる陰謀論に飛びつきます。まるで、病気で苦しむ人に対して「絶対治る」というエセ科学に基づく療法のように、その人が欲しいものを提供するのです。

ここにハマると容易に抜け出せません。抜け出すには自分の間違いを認めることになる上に、陰謀論を信じる前の不安定な状態に戻らないといけません。

やっかいなことに、陰謀論にハマる人は無知・無学・無教養といった人とは限りません。それなりに専門的な知識を持っている人も引っかかります。この辺の性質上はカルト宗教に近いものがあります。

陰謀論を100%否定するのはかえって危険かも知れません。詐欺やカルトには引っかからないぞ、完全に無視するぞ、という人もそれらに引っかかります。全てを半信半疑に持っていければいいのでしょうけれど、それもまた難しいかも知れません。

https://hrsgmb.com/n/n48fbc76f0a99

以前、こんなことを書きましたが、正しいものと正しくないものを完全に分けることなど神様でもないのだから出来るわけがありません。陰謀論の本当の問題点は、荒唐無稽な話だとか無理矢理つじつまを合わせているとか内面的な問題ではなく、陰謀論を信じている人がその説以外を全く認めようとしない、議論すら許さないという、外部に対する極端な閉鎖性だと思います。

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