スポーツ選手の幼年化と専門化、観戦の幼年化と専門化

今回のWBC、ワールドベースボールクラシックはアメリカの巨大配信サイト、Netflix社が日本国内での独占配信権を獲得しました。それにより、日本ではNetflixを通じてでしか、試合を見ることが出来ません。毎回、放送することで高い視聴率を誇ってきたコンテンツを、日本のテレビ局群は失ったことになります。サブライセンスでの放送も交渉がまとまりませんでしたが、そりゃそうでしょう。Netflixの狙いはこれまでサブスクリプション契約が少ない日本人中高年男性がターゲットなのですから、テレビ放送したら結局Netflixの契約をするわけがありません。

かくて、オールドメディアはNetflixの後塵を拝することになったわけですが、これによって未来の野球選手たる少年たちが世界最高峰の野球を見ることが出来なくなる!と騒ぐのもまあ、良くあるパターンではありますよね。五輪競技から野球が外されたときにも全く同じ論調だった気がします。

サッカーにおいてもDAZNのJリーグ配信だったりW杯予選・本戦での配信でも似たような話はありました。野球少年をサッカー少年に置き換えるだけのことですが。

しかしながら、子供がスポーツに接する機会というのは、昔に比べれば一般化よりも専門化してきていることは間違いないでしょう。昭和の頃には中学まで別のスポーツをしていたのに高校から野球を始めてプロ入りした、なんてことは偶にありましたけれど、現代ではリトル、シニア、甲子園、大学、社会人といったルートの末にプロ野球が存在していて、公園で遊んでいた草野球からのプロ入りなんてことはもうかなりレアすぎるケースになってきました。子供の頃から専門的に指導を受けて練習し続けた末のプロ選手と言う結果になります。サッカーも似たようなものでしょう。最終ルートがアメリカのMLBになるか、欧州のトップリーグになるかの違いだけです。

同じように、「スポーツ観戦」ももはや気楽にお手軽にお安く(あるいは無料で)楽しめる娯楽ではなくなってきました。

昔の野球は一部の球団を除けば、満員にはならなかったですし、パ・リーグなんてガラガラのガラガラでした。川崎球場でのロッテ戦で流しそうめんやっていた伝説があるくらいです。見に行きたければプロ選手のプレーを気軽に見にいけるものでした。しかし今では多くの球団で人気が高まり、チケットも親子連れだと気軽に買える値段ではありません。

テレビ観戦も同じで、特定の球団に偏ってはいたものの、日本テレビでは巨人戦は全試合中継、そして巨人がビジターになる試合も他局が放送するのが常でした。それに加えて地方局が地元の球団の試合を放送していたのですから、野球を無料で見るのは子供でもなったくハードルがなかったのです。

しかし、こちらもまた「放送から配信へ」の時代になり、有料コンテンツとしての価値が高まったために、サブスクを契約していないと多くの試合を生配信で見ることは出来ななりました。有料になった以上、親が契約しないと子供は見られません。子供の趣味に親が合わせるか、親の趣味に子供が合わせるかしないといけない以上、いわゆる「未来の野球少年」にも影響があるのは確かでしょう。

そして、子供の頃から有料コンテンツとしての野球を見ていない人が、大人になって見るようになるか、と言うと疑問もあります。自分の稼ぎで見ることができる環境になっても、子供の頃から見ていないスポーツに関心を持つでしょうか?

この「観戦の幼年化と専門化」という事例は、これにおいてもサッカーにも当てはまるでしょう。サッカーに関しては地上波放送がほとんどなくなったのが90年代末であり、その後はスカパー!による放映の時代を十数年経てからDAZN時代になりましたので、野球よりも10年以上は先に「観戦の幼年化と専門化」は進んでいるはずです。

この影響は、現代社会、特に90年代以降の趣味の多様化とも密接に絡んでいます。数多くの趣味の一つに、野球観戦やサッカー観戦、あるいはスポーツ観戦という大きなくくりが存在しています。こういったスポーツの関係者にとって、ファン・視聴者を争うライバルは、他競技ではないのでしょう。

ドラマファンとか音楽フェスファンとか、あるいはキャンプとか将棋とか、ドライブとか登山とか、あらゆる趣味がライバルであり、スポーツを見る人というくくりがその他大勢の中の一つに過ぎません。もちろん、あらゆる趣味はそれぞれ対象者は重なり合っているものですけれど、現代人の可処分時間を奪い合うことには変わりなく、一番のライバルはXとかInstagramや課金ゲームなどの、多くの時間を費やしているスマホアプリでしょうね。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA