独裁者と共和国の不幸な親和性

独裁者・独裁政権と聞いてどんな人物や国家が思い浮かぶでしょうか。

プーチンのロシア?
金正恩の北朝鮮?
習近平の中国?
エルドアンのトルコ?
あるいはドゥテルテのフィリピン?

一番最初に思い浮かぶ国はそれほど多彩でもないでしょう。そして今、私が挙げた5つの国家には全て共通点があります。

いずれも「共和国」を名乗っていることです。

ロシア共和国
朝鮮民主主義人民共和国
中華人民共和国
トルコ共和国
フィリピン共和国

いずれも、自称「民主的」手続きを経て国家元首が選ばれているから「共和国」を名乗っているわけです。この中でもトルコとフィリピンはまだ比較的、公正な選挙が実施されているようですが、ロシアでは野党の指導者が暗殺されますし、中国では国家主席は共産党幹部の中で決められます。北朝鮮に至っては既に金日成・金正日・金正恩と三代にわたって世襲されています。

王制の国が独裁者を生み出すのは歴史的にみればそれほど特殊なことではないでしょう。過去にはヨーロッパでもアジアでも国王が独裁政治を行った事例はいくらでも見つかります。今でも、現にサウジアラビアなどの中東では珍しくありません。しかし、首長を大衆から選出するはずの共和国でなぜ独裁者が生まれるのでしょうか?

共和国ではトップ(ほとんどは大統領を名乗ります)を国民全体の投票で選出すること(あるいは建前)になっています。そのため、国民全体の利益を代表する人物が選ばれることになるわけですが、少なくとも国民全体の過半数から支持を得て就任したトップを批判することが難しくなります。

もちろん、この辺を共和政における民主政治が正当に実施されているような国であれば当然ながら大統領であっても国民やマスコミは容赦なく批判します。アメリカやフランスがその代表例です。イギリス国王とその政府に逆らって成立した国家であるアメリカ合衆国、ルイ16世の処刑とナポレオンの追放など国王・皇帝を排除して再建されたフランス共和国といった歴史を経ずに共和政を取り入れた共和国では、トップを批判する文化が育っていないのではないでしょうか。

共和国ではない国でももちろんトップを批判する文化が育っていないケースは多いでしょうけれど、例えば日本やイギリスのような立憲君主制の国では首相は権力では最上位にいますが権威としては最上位ではありません。もし万が一、国王や天皇と首相が対立するようなことがあった場合、首相側が勝てる保証はありませんから、独裁を振るうのは難しくなります。立憲君主制でなく、国王が実権を握っている場合でも今度は逆に国民の投票によって成立している権力ではありません。国民の支持を母体にしていない権力ですから振るえる範囲も限られることになります。

一方、共和国では国王も皇帝も天皇も存在しません。大統領が権力と権威の最上位に位置します。そのトップが批判されることもありませんので、やりたい放題が可能になります。そして残念なことに対抗相手が不在でさらに批判もされない最高権力者はやりたい放題をしてしまいます。共和国の大統領はその権力の源は国民の支持です。そのため大統領には白紙委任状が与えられたという理屈を展開することが可能となってしまいます。

繰り返しますが、共和国だからといっても必ず独裁者がいるわけではありません。アメリカ合衆国大統領は強大な権力者のように思われますが、そもそもアメリカ合衆国そのものが強大な国家であるから大統領が大きく見えるだけです。国内において大統領が実行できる権限は結構限られています。国内政治に関しては本来は連邦議会と行政機構が行うものであり、さらには連邦国家ですので州政府の権限も強く、オバマ前大統領のオバマケアも2期8年かかってようやく成立しました。アメリカ大統領は外交と軍事のために存在するとも言えます。

フランスも何せ三権分立で有名なモンテスキューを生み出した国家です。内政は基本的に首相とその内閣が実行するもので、大統領は大まかなプランと外交・軍事と名誉職的なところがあります。

アメリカやフランスのように他の存在と権限が分割された大統領であれば国民を苦しめ他国を損なうような独裁政治など行えません。権力も権威も集中する国家元首が存在する共和国が独裁政治との不幸な親和性があるということです。

だからといって、これから新しく王制を作り出す国家など出てこないでしょう。国家元首を縛る憲法を作り、それを遵守できるかどうかが、独裁国家あるいは新しくできる独立国家の行く先を決めることになります。

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