ある山の中で、タヌキのポン太とキツネのコン助が、変化の術を競い合っていました。二匹とも、優れた技の持ち主で、なかなか決着は付きませんでした。
「はあはあ。結構やるじゃないか。よし、次は人間に化けてみよう」
と、コン助が持ちかけました。
「ああ、いいよ。今度はおいらからいくぞ」
ポン太はそう言って賛成し、足下に落ちていた枯れ葉を一枚拾いました。そして、それを頭の上に載せ、おもむろに念じ始めました。
「ムニャムニャムニャ、エイッ!」
気合いを入れて宙返りをしたポン太は、地面にその足が着いたときには、ヨボヨボのおじいさんになっていました。本当の人間のように見えます。ポン太は、よっこらしょ、と言って、老人さながらによろよろと前転すると、ボンッ!という音とともに、また元の体に戻りました。
「むむっ、こっちも負けないぞ」
コン助はちょっと跳んで、側の木にある若芽を取り、ポン太と同じように変身してみました。
一瞬の後、コン助は五、六歳の男の子になっていました。それから、幼い子供らしく、うんしょ、と言って前回りをして、キツネの姿に戻りました。
「うーん。これじゃあ勝負が決まらないなあ。今度はどんな人間に化けようか」
ポン太が悩んでいると、コン助が物陰から一枚のテカテカした葉っぱを取り出して、
「じゃあ、これを使って変身してみなよ。でも出来るかなあ」
と言いました。その口調に少し馬鹿にされたと思ったポン太は、
「おいらに化けられないものなんて無いよ。貸してみな」
と言って、青々とした葉っぱを受け取り、頭に載せて宙返りをしてみると・・・。
その場所には、コン助が一匹だけでいました。
「いやあ、本当に変身できるものなんだなあ。人間達が「カンヨウショクブツ」とか言っていた木からちぎってきた、変な葉っぱだったんだけど。ああ、お腹がすいた。何か食べようっと」
そう言ってコン助は、林の奥の方へと走り去っていきました。後に残ったのは、男性のマネキン一体だけでした。
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