顧客保護とリーク対応におけるAppleのジレンマ

iPhoneのロック解除を巡り、FBIや捜査当局とAppleの間ではここ数年来、激しい応酬がありました。テロ攻撃を起こしたテロリストが使用していたiPhoneのロック解除を、捜査のために要求するFBIと、それを認めれば他の一般人のプライバシー保護が失われるから拒否するApple、という構図でした。

もちろん双方が理のある意見ではあるのですが、旧型のiPhoneだったこともあってか、昨年のテロ事件についてはFBIの方で解除できたようです。

米司法長官、銃乱射事件解決に協力しなかったとAppleを批判
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2005/19/news048.html

Appleはセキュリティに対して力を入れていますよ、というのが顧客へのアピールとなり、それは金儲けのために行っていることであって、そのためにアメリカ国民の生命に危機を与えて税金も費やしてしまった、と言うのがFBIの主張です。

その一方で、iPhoneのロック解除を求めに応じて簡単にできる仕組み(バックドア)を組み込めば、逆にそれをテロリストや悪意ある国家に悪用されてしまう、というのがAppleの反論です。

この論争に素人が決着を付けることなど出来ません。そもそもテロ攻撃を生み続けているのはアメリカ政府の政治・外交・軍事の失敗からだろ、という思いもあります。ただ、Appleも例えば自分たちがテロ攻撃の標的になった場合でも、そのテロで使われたApple製品のロック解除は行わないのでしょうか?

例えAppleがテロ攻撃に遭ったとしても、顧客保護の姿勢は変えない、というのは美談になるかも知れませんが、それにしても限度があるでしょう。

また、近年のAppleは正式発表前に新製品や新サービスがリークされています。

iOS 14初期バージョンが丸ごと流出……開発用iPhone 11を不正に売買か
https://realsound.jp/tech/2020/05/post-558553.html

ただ単に、ライバル企業がAppleの企業秘密を得て自社製品に先取りさせたり、ブログや動画の広告料稼ぎのためにリーク情報を探している自称情報通の人間が得するだけなら大したことはありませんが、製品のセキュリティそのものに関わるようなリークがなされているのであれば問題でしょう。顧客の個人情報や生命・財産にも関わりますし、Appleという企業の信用や存続にも関わりますし、場合によってはアメリカとどこかの国との国際問題に発展しかねません。

先述のテロリストが持っているiPhoneのロックを解除するために必要な情報を、その事前リークで得ているとしたら? それを狙うとしたらFBIだけではないでしょう。世界にあまたいるテロリストや、反米的な国家の情報機関にとっても垂涎の的です。

iPhoneのロック解除を拒否するAppleには一定の理屈が存在しますが、リーク情報のコントロールが出来なければ結局は同じことでしょう。あるいは、どこに抜け穴があるか分からない方が問題かも知れません。空き巣に裏口があることを伝えるか、どこかの窓を割られるかの二者択一です。まさに究極の選択となってしまいますが、これは技術的問題というよりも政治的問題でしょう。CEOのティム・クックの政治力が問われることになります。

上手く処理できなければ、もしかするとCEOへの批判や、あるいは株主による更迭議論にまで発展しかねない問題だと思います。

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