差別の歴史を残すか消すか

色の白いは七難隠す、ということわざがありますが、この言葉は今後は使用を控えた方が良いかもしれません。もちろん、この言葉が成立していた日本社会においては黒人の存在を想定しておらず、差別的意図が全く含まれていないことわざなのは承知の上ですが、そうであってもあまりに悪い意味でタイムリーすぎるでしょう。

こういった、本来の意味や意図、目的とは異なる形である言葉が使えなくなることについて、言葉狩りだという批判もありますが、昔は使っていたけれど今は不適当な言葉というのはいくらでもあります。これはダメという社会的同意が出来ればもうどうしようもないでしょう。

今後は新しく使わないとしても、過去の小説・漫画・映画などで使用されている場合はどうなるでしょうか? その部分を同じような意味で全く別の言葉に、さかのぼって変更するでしょうか。それとも、「当時は通例的に〜〜、作者の意図を尊重して〜〜」といった注意書きを付けた上で残すでしょうか。

すでに存在している作品であればもうしょうがないじゃないか、と思いますが、そうとは考えないところもあるようです。

米動画サービスが『風と共に去りぬ』配信停止 人種差別理由に
2020年6月10日 18:55 発信地:ロサンゼルス/米国 [ 米国 北米 ]
https://www.afpbb.com/articles/-/3287586

「風と共に去りぬ」はこれまでにも人種差別の観点から批判されることはありました。もちろん南部貴族層を懐かしむような作品ですが、存在しなかったようにしてしまうと、過去の差別の歴史、差別と戦ってきた人たちの足跡も消してしまうことにならないでしょうか?

過去を表現するというのは難しいことです。小説でも漫画でも、映画やドラマでも昔を舞台にすると、昔は当然で今はダメという価値観とバッティングします。

https://hrsgmb.com/n/n8089e26609f8

以前noteにタバコについて書きましたが、ハリウッド映画では喫煙シーンはダメだそうです。20世紀前半あたりの男性ばかりが集まる場所を描くときにタバコが無いとものすごく違和感があると思いますが、史実に忠実である必要はないのでしょう。時代劇だって、400年前の戦国時代の風習を全て再現できているわけでは無いでしょうし。この辺は多分、保守的な人とリベラル的な人との間で考え方が別れそうな気がします。現代の価値観からみたら何だってそのままは描けないでしょう。

タバコ程度はまだかわいいものです。それこそ黒人奴隷が出てくるシーンを史実に忠実に再現するとそれだけでその映画が大炎上することは間違いありません。だからといってソフトに扱ってもそれはそれで奴隷問題を軽視していると捉えられそうです。

イギリスで人種差別に抗議続く、奴隷商人の銅像を引きずり下ろし
https://www.bbc.com/japanese/52960399

ブリストルにあった奴隷商人の銅像が倒されました。虐げられた黒人奴隷のことを考えると、銅像なんか飾るな!という気持ちは分からなくありませんが、その資産で学校や病院が建てられたことから、そこで利益を受けた人の子孫も大量にいるはずです。そういった学校や病院は破壊されないのでしょうか? 大丈夫ですかね?

さすがに今でも奴隷商売で資産を築いた人の銅像がそのまま建っているのはおかしいのかも知れません。ただ、その人の過去の歴史、ブリストルの街の歴史からその事実を消すのもおかしい話です。例えば銅像の台座だけ残しておくとかしておいた方が良いのではないでしょうか。かつて奴隷貿易があったこと、その利益で公共施設が建てられたこと、差別への抗議のために2020年にその銅像が倒されたこと、これら全ての歴史をそのまま残しておかないと、歴史を改変したことになってしまいます。過去の歴史は変えられません。なかったことにも出来ません。

過去の歴史を現代の価値観で批判するのは非常に危険なことです。また、過去の価値観を伝統としてそのまま現代に強制的に適用するのも危険です。差別は現代に残してはいけない価値観であるのは間違いありません。過去の歴史において存在した差別や虐待ももちろんあってはならなかったことですが、その過去が存在したことを消し去るよりも、どのように始まり、どのような経過をたどり、どのように終わった(あるいは終わっていないのか)を考え続けていくことの方が、大切なのではないかと思うのですが、こういった考え方も差別的なのでしょうか。

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