
非正規雇用が20年ほど前の規制緩和によって、派遣も含めて大幅に割合が増加してきた日本ですが、正規雇用を増やすためには正社員の解雇の要件やペナルティを緩和すべきだ、という意見がずっと存在します。
確かに終身雇用を前提としてきた日本企業では、正社員を解雇するためのハードルが高いことは確かです。それは社内における空気や心理的なものだけではなく、解雇することによって様々な助成金やら補助金やらの受給が出来なくなったりします。またそもそも解雇する場合に労働者本人が抵抗したり、労働組合と企業との闘いだって起こり得ます。
正規雇用を増やした後に、企業経営が上手く行かず、事業を縮小するとしても正規雇用を減らせなければ人件費の負担がさらに経営を圧迫するので、正規雇用を簡単には増やせないのだ、という理屈は確かに容易に理解出来るものです。ただ、実際に簡単に正規雇用労働者のクビを切れる法制度を導入したとして、本当に正規雇用が増えるのか、ということが一番の問題になります。
もちろん、日本以外の各国での状況や学術的なアプローチなどによって分かっていることなのでしょうけれど、実際に日本に適用してそうなるかはやってみないと分からないというか、100%確実な予測はあり得ません。
解雇規制が日本ほど厳しくない諸外国を例に挙げて、そのような制度にすべきだと欧米を例に挙げる経営者ももちろんたくさんいますけれど、だったらそれはそれで欧米のように株主によって経営陣のクビがポンポンすげ替えられるような社会、企業風土になるべきでしょう。
株主が経営陣に対して厳しい要求を行うことについて、日本企業の経営陣は短期的な利益を求めるのではなく、日本的経済システムによる長期的な視点が大事と言い張りますが、だったら正規雇用の労働者を解雇しづらい仕組みも日本的経済システムに入っているはずです。
企業が正規雇用も非正規雇用も自由に出来るという制度は、経営陣も簡単に路頭に迷うような社会になれば、それなりに労働者には受け入れられるのではないでしょうかね。
ちなみに、日本と同様の問題に苦しんでいたイタリアでは最大24ヶ月分の金銭補償に当たる解雇解決金を支払うことで企業側の自由な解雇を認める制度を導入して、正社員が増えているとのことです。
確かに、12ヶ月なり24ヶ月なりの給与と同額の補償をもらえるなら、解雇しやすい制度を導入しても我慢というか、このお金を生活費に回してその間に別の会社を探そうと考えるでしょう。
そういった補償金を受けた失業者が雇用保険による失業手当を受けないようにすれば、失業手当の財源となる国家財政の負担が減ります。同じく、その財源である雇用保険自体のパーセンテージも減らせるでしょうから、失業保険が必要な労働者解雇を行わない企業が、会社負担分の失業保険額を減らすことにもつながります。
労働人口が減り始める時代であり、企業の経営状態の上下動も激しい時代でもあります。それに合わせて雇用・解雇の制度を変える必然性は理解出来ますが、ただ単に正社員の解雇をしやすくするように、という制度は支持が得られません。この辺がこの秋の衆議院議員総選挙では争点にはなりませんでしたが、いずれは争点になるはずです。
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