エンターテインメントの基本は、見る側聞く側が思ってもいなかったものを受け取ることです。つまりは事前の意識的・無意識的な予想を「裏切られる」ことです。
受け取る側があらかじめ予想していたそのままだったら、エンターテインメントは成り立ちません。思いがけない、びっくりする、どんでん返し、まさかの結末といった分かりやすい「裏切られ方」だけではなく、綺麗な歌声、美しい容姿などもあえて言うなら良い意味での「裏切られ方」です。
ハラハラドキドキという感情はたいていのエンタメを鑑賞中に感じるものです。そのため、エンタメを消費するのもそれなりに心的負担がかかります。負担と言い切ってしまうと、エンタメなんか見なきゃいいという話になってしまいますが、「良い意味で裏切られる」ことによって楽しむのがエンタメですので、裏切りの大きさが大きいほど、驚きを得られます。その驚きのことをここでは負担と呼びます。
ただ、残念なことにエンタメの「裏切り」は常に全てが「良い意味で」のものとは限りません。分かりやすいのはスポーツでしょう。好きなチーム・応援する選手が負けてしまったときは「悪い意味」での「裏切られ方」という負担が心に来ることになります。応援しているJリーグチームが天皇杯で2年連続大学チームに負けるとか、裏切りの衝撃の度合いは半端なものではありません。いや、本当に。
芸能関係のエンタメだって、常に良い思いをするとも限らないでしょう。テレビ番組を時間をかけて見ても面白くないこともあれば、お金を払って出掛けてみた映画や演劇がつまらないことだってあり得ます。
小説やゲームも同じです。お金や時間や労力を費やしてエンタメを体験してみて、必ず「良い意味」での「裏切り」をくれるとは限りません。ある程度その分野に詳しくなれば、外れを退く確率は減らせるでしょうけれど、安全策を採ればなおさらつまらなくなってしまいます。
こういうハラハラドキドキの「裏切り」をどれだけ受け入れることが出来るかは、人によって異なると思います。毎日のようにドラマや映画を見たり、衝撃的な結末・サスペンスの小説を読んだりすることが平気な人もいれば、あまりハラハラドキドキへの耐性が無い人もいます。
耐性が無い人にとっては、そういうハラハラドキドキ展開が強そうなエンタメを避けるでしょう。私は芸能関係のエンタメよりも、ガンバ大阪の試合と、日本代表のW杯予選でのハラハラドキドキを体験することの方が多いですが、サッカーで贔屓のチームが1点差で勝っている状態で試合終了間際に相手チームの猛攻をしのいでいる状況ほど、心臓がバクバクすることって普段は経験しません。
人によっては仕事で、とてつもないプレッシャーと戦っているケースもあるでしょう。そういう人はハラハラドキドキして良くも悪くも「裏切り」が待っているエンタメを楽しめるのでしょうか?
日々エキサイティングな生活を送っている人は、エンタメにも安定を求めそうな気がします。もう今はありませんが水戸黄門的なお約束の展開というのは、程々の面白さを感じるエンタメとしては非常に優れたものなのでしょう。サザエさんや笑点も裏切りレベルにおいては多分同じカテゴリに入るでしょう。
現代はあらゆる業界が消費者の時間を奪い合っている時代ですが、ハラハラドキドキ許容量の奪い合いでもあるかも知れません。
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