ロシアにおける部分的な動員令によって、ロシア国外に脱出する人が相次いでいたり、徴兵を逃れるためにわざと怪我したりする人がいたり、ついにロシア国内でもウクライナ戦争の人的かつ直接的な影響が広く出てきました。
国外に脱出するロシア人については、ドイツやフランスのように歓迎する国もあれば、バルト三国やポーランドのように警戒している国もあります。移住者が本当に戦争やプーチンを批判する人とは限らないため、どちらかというと警戒する方が近隣国の対応としては正しい気がしますが、ドイツやフランスは理念もあるし若い労働者が欲しい(特にドイツは)という理由もあるのでしょう。
そもそも、本当にウクライナ侵略やプーチン独裁体制に対して異を唱えるのであれば、今ではなくて半年前には出国していたはずです。全員が全員ではないでしょうけれど、厳しい言い方をすれば、今ロシアを脱出している人は、軍人によるウクライナ侵略戦争は良いけれど、自分が命を削ってウクライナに戦争に行くのは嫌だ、という考えの持ち主であるはずです。もちろん、個々に様々な事情はあるのでしょうけれど。
これは朝鮮半島有事・台湾有事における極東アジアにおいてもそのまま準用できる考えでしょう。北朝鮮から脱出するのは困難を極め、中国からも政府に疑われずに移住するのは難しいですが、いざ有事の際に逃げ出してきた人たちが、本当に全員難民として扱って良いものかどうか。政府としてはあくまで国内法や国際法・慣例に法律に基づいて判断することになるでしょうけれど、その際に国民感情や政策への批評がどのように表に出てくるかは、非常に微妙な、センシティブな問題になります。
逆に言うと、北朝鮮や中国から逃れた人たちへの近隣国の対応は、今回のロシアから逃れた人たちへの対応を踏襲することになるでしょう。
ロシアによるウクライナやジョージアへの以前までの侵攻具合も、極東有事に転用され得るものです。昨年までのように、ウクライナやジョージアの「一部」に限定して、「現地ロシア系住民の保護」だけを掲げて占領する試みは、欧米諸国も避難はすれど被害国に軍事支援することはありませんでした。いわゆるサラミ戦術ですが、これを続けずにプーチンが今回、ウクライナをナチスとして扱い、キエフ始めウクライナ全土に攻め込んだことで、欧米含めて多くの国がウクライナを公然と支援することを呼び起こしてしまいました。
ウクライナ東部の緩衝地帯化している地域「だけ」を狙っていれば、ここまで欧米が軍事支援していたかは疑問です。クリミア半島は実質見捨てていたのですから。
そして、台湾で言えば、台湾本島よりもはるかに中国大陸に近い金門島や馬祖島など、台湾が実効支配している島「だけ」を中国軍が狙った場合、アメリカ軍は全力で中国軍と戦闘を交えるでしょうか? 台湾に無制限の軍事支援を与えるでしょうか?
南シナ海における中国の軍事基地化を防げなかった国際社会が、一部の島だけを目的とした中国による軍事侵攻に対して、今回のウクライナ戦争並みの支援や制裁に踏み切るでしょうか?
そして、日本領で言えば、実効支配はしているものの無人である尖閣諸島についても同様です。ロシアによるウクライナ侵略が成功するか失敗するか、どのような結末を迎えるのかについては、ただ単に遠い国の話ではないでしょう。
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