江戸時代の小藩、江戸から遠方の藩は、参勤交代が免除されたり、数年に1回で良かったり、状況を考慮されていました。小さい藩では江戸と国元の移動だけでも負担を維持出来ないため、また遠方では当然ながら移動に費用と時間がかかりすぎるからです。
藩主が国元にいなければ、国元にいる家老やその他家臣に良からぬ考えを持つ者によって乗っ取られる恐れがありそうなものですが、現実にはありませんでした。血縁を辿って実質的に自分の子や孫を藩主に仕立てるくらいのことはあったでしょうが、室町時代・戦国時代のような、守護代やその家臣が守護を追い出して地域を支配して独立するような動きは江戸時代には起こり得ません。
そもそも、戦国時代において統治の正当性は武力によって裏付けされるもので、中央である京の幕府や朝廷が授ける官位官職だけでは、容易に現地武力勢力によって統治者としての立場を奪われてしまいました。
一方、江戸時代では地方にいる大名がその地を統治する正当性は、江戸にある幕府が保障するものであり、幕府が認めた大名家でないと、その地の統治者としては認められません。大名家を追い出した武力勢力が独立を宣言したところで、島原の乱のように幕府と周辺大名による大兵力によって潰されるだけです。
中央が地方の権力を保障するのは中央集権体制ではごく当然のことですが、中央が権力を委任させすぎると、その権力を利用して反乱を起こします。中央側の権力・権威が下がりすぎても同様で、それが起きたのが幕末期でした。
では地方の有力者に権力を与えず、一人の中央の権力者の他は皆一律に権力を持たない構造にしてしまうと、それはそれで古代中国の秦帝国のように、あっという間に瓦解しかねません。
現代においては絶対的権力者1人とその他全国民、ということなどありえませんが、それに近い独裁を求めようとする国は日本周辺だけでもいくつもあります。
ロシアはプーチン大統領が絶対性を持っているように思われがちですが、年金改革に手を付けたらデモが頻発して修正せざるを得なくなったり、今回のウクライナ侵攻でも上手く行かないために国内の強硬派に突き上げられて予備役動員に至ったりと、独裁者なのに権力基盤に絶対性は感じられません。
権力構造が複雑化しているのか、政治体制的にはプーチン一強なのに支持層の反発をなだめにかからないといけないのです。
絶対的権力を持てていないのなら、そのうちクーデターでも起きるのではないかと期待?してしまいますが、軍部にはそれなりに干渉出来ています。
各種報道で、プーチンが軍部の意見を聞かずに強引に進めたために苦戦に直面しているということが言われていますが、まさに現在のロシア軍はウクライナ戦争において、中央側の権力が強すぎて現地判断が出来ずに苦しめられているそうです。
ソ連時代からの意思決定の仕組みがそうらしいのですが、前線が主導権を握ることはありません。
逆に、下級将校にある程度の裁量を任せているウクライナ軍が互角以上の戦いを出来ている理由の一つになるのでしょう。
軍部さえ掌握していれば権力は維持できる、ということはかつて中国で鄧小平が証明しましたが、集団指導体制内での鄧小平の立ち位置を、今のロシアで真似るのは無理でしょう。そうなると、プーチン大統領のままで、国内の強硬派からの突き上げに遭いつつ、ズルズルと勝てない戦争を続けていくしかないのではないでしょうか?
そして、むしろウクライナの方が、晴れてロシアの侵攻をはねのけて安全保障を確保した後に軍功労者の権力増大を気にしないといけなくなる(イコール、クーデターの心配をしないといけなくなる)のではないでしょうか?
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