一匹狼か一匹イワシか

「一匹狼」という言葉は一般に膾炙していますが、「一匹熊」とか「一匹虎」とか「一匹鷲」などとは言いません。当たり前ですが一匹だけで単独行動し続けることがない狼だからこそ、則ち本来群れる動物だからこそ、「一匹狼」の特異性が際立ちます。熊も虎も元々群れず、せいぜい番やその子と一緒に動く程度です。一匹だけでも熊や虎は怖いのに、熊や虎が何十頭も群れて行動していたらあまりに怖すぎます。

逆に、群れていても強くない存在の場合も言いません。多数でも弱いのに一匹になったらどんなに特異な強さを持っていても結局は弱いでしょう。「一匹カモメ」「一匹イワシ」「一匹カタツムリ」とか言われても、だからなんやねん、としか返せません。

そもそも「一匹狼」の比喩は、自分は社会性動物であるヒトだけれど、そこら辺の奴らと群れるつもりはなく自分一人でやっていける実力がある、という自負や評価と表裏一体です。

言い方を変えれば、他者との協調が出来ず協働によるメリットを享受出来ない代わりにそれ以上のパフォーマンスを一人でたたき出さなければ、「一匹狼」を名乗れません。出来なければ「一匹イワシ」です。

よく言うフリーランスの仕事も、会社等の組織に所属していないことから一匹狼に例えられがちです。しかし、組織のメリットを受けられないからこそ、取引先や同業者との関係を構築する協調性が必要で、会社の名前で仕事があるサラリーマンよりも社会性は必要でしょう。

会社組織という群れの中にいる場合は、群れ内部での関係性も気にしないといけませんが、その分、社外との関係性は「組織内の一員」として作られます。究極的には自分以外の誰でも構わないのです。狼の群れで一匹(本来は一頭でしょうが)が別の一匹と入れ替わっても群れは成り立ちます。

しかし「一匹狼」には代わりはいません。利益も損害も全部自分に降りかかってきます。だからこそ、組織以外での社会性がないとやっていけないはずで、人間関係に悩んだ人が独立開業してフリーランスに!というのは厳しい現実が待っているんじゃないでしょうか。一匹狼だって、一人で獲物を仕留めて一人で寝床を確保するのを毎日死ぬまで続けないといけないのです。

世界で一番強い狼にならなくとも、それなりにやっていける実力はないと一匹狼は務まりません。それはフリーランスも同じで、とてつもないスゴい実力を持っていて、ほっといても仕事が舞い込んでくるレベルの人か、フリーランスとして独立以前よりも人間関係を作り上げて仕事を取ってくるくらいの人でないと、独立してもやっていけないですよね。

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