AIバブル崩壊してもAI産業は成長し、それとともにコモディティ化への戦いが始まる

AI技術の急速な発展は、良くも悪くも社会全体に大きな波紋を呼んでいます。特にOpenAIをはじめとするAI関連企業が開発する生成AIは、その革新性と可能性から「AIバブル」と呼ばれる熱狂的な投資ラッシュを引き起こしました。しかし、現時点ではこのバブルが崩壊寸前であるという指摘も多く、株式市場の急激な上昇は近い将来の崩壊を招くことは想像に難くありません。

ただ、このAIバブルが崩壊したとしても、AI関連の技術自体が無くなるわけではありません。過去の事例を振り返ると、ドットコムと名付ける企業・サービスを立ち上げるだけで株価が急騰していたドットコムバブルが弾けた後のインターネットは、インターネットの利用が控えられたわけではありません。ただ単に愚かな金融機関と投資家と偽物の実業家が損はしましたが、インターネットそのものは常時接続の時代に入り、そしてスマートフォンの普及によって誰もが常にウェブにアクセスする時代が到来しました。また、リーマンショック後も不動産市場は、その需要と供給のバランスを取りながら、一定の成長を続けています(また別のサブプライムローンまで生まれましたが)。AIに関しても同様に、一時的な熱狂が冷え込んだとしても、社会や経済活動におけるAIの役割は不可欠であり、徐々に成熟していくことは避けられないでしょう。

しかし、現在のAI業界には、過去の事例と比較していくつかの課題が存在します。特に、OpenAIのような最先端を走る企業が抱える慢性的な赤字経営は、その深刻さを物語っています。これはOpenAIに限ったことではなく、多くのAI企業が、開発費や人材確保に多額の資金を投入していますが、しっかりと売上の増加と利益の確保を実現できている企業はごくわずかです。今はAIバブルに乗っかってくれている機関投資家と個人投資家を魅了する美辞麗句によって投下される資本を先食いと言うかタコが足食ってるような状況の企業だって少なくありません。激しい競争は、利益確保のステージを先駆者にもたらしてくれないのです。

また、EvernoteやDropboxといった過去の新しい市場を開拓し、先行者利益を得たはずのIT企業が、フリーミアムモデルの限界によって大資本に負けていく事例もあります。他のバックグラウンドを持たない、独立系のAI企業が生き残るのは容易ではありません。逆に、Evernoteのノート市場をOneNoteとGoogleKeepで、Dropboxのオンラインストレージ市場をOneDriveとGoogleDriveで奪ったMicrosoftとGoogleのような巨大なIT企業は、既にAI技術を自社のエコシステムに統合し始めており、これらの巨人がAI関連サービスをコモディティ化していく可能性も十分に考えられます。値下げ競争を仕掛けられたら、独立系サービスは太刀打ちできません。

つまり、AI技術そのものは存在するものの、それを活用する企業の競争は激化し、中小規模の企業が生き残るのは困難になるでしょう。

このコモディティ化への対応として、AI企業は、単なる技術開発に留まらず、具体的なビジネスモデルを構築する必要があります。AI技術を特定の業界や用途に特化したソリューションとして提供することで、競争優位性を確立し、持続的な成長を目指すことが重要です。例えば、医療分野における診断支援AI、金融分野における不正検知AIなど、ニッチな領域で専門性の高いサービスを提供することで、コモディティ化の影響を軽減できる可能性があります。具体的にはユーザーを企業向けに絞ったBoxがその代表です。

来たるべきAIバブルの崩壊は、社会全体における経済的な破綻に加えて、AI業界にとってさらに厳しい試練となるでしょう。しかし、過去の事例から学び、課題を克服することで、AI技術は社会に不可欠な存在として、より成熟した形で発展していくと期待されます。重要なのは、過度な期待や投機的な投資ではなく、実用性と持続可能性を重視したAI開発を進めていくことであり、ただひたすら目先の株価やIPOのために開発やニュースリリースを行うことではないのです。

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