「いらっしゃいませ。今日はいかなるご用向きでございましょう」
馴染みの骨董屋を訪れると、店主がいつもの通り恭しく私を出迎えた。この地方の名士であり、この店の上得意である私の歓心を買うために、この店主はいろいろとサービスをしてくれる。
「ああ、今日は急な注文なのだが、七世紀に作られた鏡を見つけてくれ」
「七世紀の鏡でございますか」
「そうだ、どうかな。いつも通り代金は言い値で払う」
「さようでございますな……」
初老の骨董屋は、あごひげを手でさすりながら何かを思い出す素振りを見せた。仕入れ先を考えているのだろう。
「心当たりはございます。いつまでに用意すれば……」
「三日後までだ。かなり急だが、出来るか」
「何とか出来ると思います。手に入れたら電話を差し上げますので」
「うむ、よろしく頼む」
私は店を出て、近頃の懸案の種である、先祖代々伝えられた古墳跡に向かった。先日から発掘調査が始まり、四日後にはいよいよ石棺を開ける予定だという。今は石室の調査段階だが、すでに世紀の大発見は目前かの様な見込みらしい。それは困るのだ。かつて石棺をずらしてその下に、私が脱税して蓄えた宝石や金塊を埋めたままなのである。今、取り戻すと石棺を動かした跡が必ず見つかる。さっさと取り戻しておけば良かったのだが、思ったより早く調査がなされたので無理だった。こういう事態になった以上、苦肉の策として、七世紀の遺物を六世紀の石棺にこっそり混入する事にした。これで、この遺跡の信憑性が大いに下がり、そこで私が強く主張すれば発掘は中止になるだろう。先程の骨董屋への注文はそのためだ。
三日後、骨とう屋から連絡があった。見つけたそうだ。私は金額を聞いて、大金を持って向かった。
「いかがでしょう。この通り用意できました」
言った通りに調達してきた。私がひいきにしているだけあって、さすがに優秀だ。
「おお、すごいな。うん、いい感じだ。よし、金だ。端数は切り上げて取っとけ。急がせた礼だ」
「毎度ありがとうございます。こちらの小さな鏡は、オマケとしてお付けいたします」
「うむ、何だか汚いが古そうだな。もらっておこう」
私は暗くなってから石室に忍び込んで、用意した鏡を石棺に入れた。ついでにもらった小さい方も入れておいた。やれやれ、これで明日には一連の発掘騒ぎも収まるだろうと思って、祝杯を挙げて寝た。
翌日、私は報道陣の来訪で起こされた。二日酔い気味の頭に記者の話を聞いて、いっぺんに目が覚めた。何と、調査中の石棺から、七世紀の鏡と共に、五世紀の小鏡が見つかって、調査チームは大騒ぎしているそうだ。私は驚いて声も出なかった。
ちくしょう、あの骨董屋め。サービスしすぎだ。
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