ショートショート「砂時計コレクター」

「月刊コレクターズ」誌の取材記者兼カメラマンである私は、今日は砂時計コレクターの取材のために、とある郊外の一軒家を訪れた。大きな屋敷だった。
 ベルを鳴らすと、恰幅のいい、五十歳くらいの主人が現れた。

「電話を下さった記者の方ですね。ようこそ、遠いところまで。どうぞお入り下さい」

 私も挨拶をして中に入った。すぐにコレクション部屋に通してもらうと、そこには無数の砂時計があった。古今東西、大小さまざまな砂時計に囲まれながら、私は主人へのインタビューを行った。
 写真も撮り、今日の取材が一通り済んだところで、主人のもてなしを受けた。コーヒーを頂きながら、ふと、部屋の片隅にある小さな戸棚に目がとまった。

「あの、あそこの戸棚にも砂時計があるんですか?」

 私が指さしながら訪ねると、主人は嬉しいような困ったような顔をした。

「ええ、あることはあるんですが……。ま、見てもらいましょうか」

 そう言って私を戸棚の前にいざなった。小さな扉を開けると、中には三つの小さな砂時計が鎮座していた。
 左のものは、中の砂が赤茶色をしていた。主人に断って手に取り眺めた。

「それは、私が若い頃に、小豆相場で大儲けしたので、それを記念して作った戦利品のようなものです。中身は小豆の粉末です。防腐処理はしていますが」
「小豆で時を計れるのですか?」
「いやいや、あくまで記念品ですから。使うことはないので別に不正確でもいいのですよ」

 なるほど。真ん中の時計は透明ながらも光り輝く粉末だった。

「それはダイヤモンドの粉末です。かつて、ダイヤの取引を中心にして宝石業で財をなしたのでね。ただし、ダイヤのカット作業で出る屑を利用して作ったので、タダみたいなものなのですよ」
「なるほど、これもいわば戦利品ですね。そして最後は……」

 右の砂時計の中身は、真っ白な粉だった。

「あの、これは中身は何ですか?」

 私が手に持った砂時計を見ながら、主人は困った顔をした。その時、玄関で物音がした。すぐにコレクションルームのドアが開いて、若く美しい女性が現れた。

「あなた、ただいま。あら、お客様?」

 どうやら奥さんのようだ。すぐに彼女は部屋を離れたが、私は主人を見たところ、それを二人の年齢差への疑問と解したのか、主人は照れくさそうに答えた。

「二人目の妻なんですよ」
「そうですか。一人目の方とは離婚なさったんですか?」

 言ってからすぐに私は調子に乗って余計なことを言ったと思い後悔した。だが、主人は怒る風もなく、私の手元を見て言った。

「いえ、一人目は、あなたが手に持っていますよ。骨だけですが」

 やはり余計な発言だったようだ。

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