誰が独裁者の首に鈴を付けるのか

ヨーロッパ最後の独裁者と言われるベラルーシのルカシェンコ大統領が、ある意味予想通り、ある意味分かりきった選挙結果によって6選となりました。

選挙前も選挙中も反対勢力への干渉、弾圧をしていたのですから当然でしょうけれど、ヨーロッパ各国含め批判が集まっています。

独裁者は自らの権力基盤を固めて独裁者たることを維持し続けます。民主国家と異なるのは、権力の入れ替わりが無いことです。当たり前と言えば当たり前ですが、独裁者は権力を握っているから独裁者であり、失ったらただの人です。むしろ、独裁中に弾圧したことで、ただの人になった後に間違いなく糾弾されます。刑務所に入るくらいならまだマシでしょう。まず間違いなく独裁者は、私的制裁を受けかねないレベルで民衆に恨まれているはずです。

だからこそ、老齢になっても、何十年経っても、国際社会から非難されても、国民が反発していても、権力、特に軍隊と警察を利用して独裁を続けます。

では、生命やある程度の財産を認める代わりに、権力を手放してもらうという交換条件での取引は成立するでしょうか?

権力を握っている人間がそんな取引をするわけない、と思いそうですが、かつてフィリピンのマルコス大統領・イメルダ夫人は、大統領選挙における不正選挙に怒った民衆が立ち上がり、フィリピンを事実上追放され、その後はハワイで余生を過ごしました。

まあ、その例にしてもアメリカの圧力によるものでしたし、そもそもアメリカの軍事的影響力が強いフィリピンだったからとも言えますが、独裁者がムキになってさらに民衆を弾圧せざるを得ない状況に追い込むよりは、双方がある程度の譲歩をして、いわば司法取引のような形で、独裁者は生命と財産を確保して外国に移住し、元の国では民主化が行われる、という解決策はあり得ないのでしょうか?

独裁者は個人単独で権力を行使できるわけではなく、かならず取り巻きがいます。その独裁者の家族・一族、経済的な同盟者、出身の民族・部族・組織に対して利益供与する代わりに、独裁権力への支持と、反対者への弾圧をしてもらうわけですが、一番重要な関係者は軍です。独裁者はほぼ間違いなく軍隊を握っています。その軍事力あるいは警察力を独裁権力維持のために使用します。

となると、独裁者一人を生かして外国に逃亡させても、残った取り巻き連中にとって民衆との敵対関係は残ったままです。特に軍隊は独裁者に加担して弾圧していた過去を糾弾されると逃れようがありません。

ということは、独裁権力の問題は独裁者が軍隊を掌握しているから問題なのであって、その二者間にくさびを打ち込んで関係を破綻させれば自ずと崩壊するはずです。先のマルコス大統領の例ではアメリカ軍がマルコスからそっぽを向いたことが権力崩壊の一番の要因でした。

軍が独裁者から離反させるには、独裁者を支持していると軍が損をする、と思わせるしかありません。大国の政府なり情報機関なりが暗躍して、今度は取引をその軍幹部に持っていくしかないですが、単なる損得だけの問題ではないでしょうね。韓国やミャンマーのような軍事政権から民主化への移行は稀でしょうし、それらの国でも多くの悲劇は生まれています。

独裁者が権力喪失後の保護と引き換えに穏やかに権力を移譲するというのは、思考実験というよりも妄想に近いかも知れません。ただ諸外国や民衆が民主化を訴えるだけでは何も変わらないし、個人や組織が独裁権力を振るう国家が、国際社会において存在感を持ったり他国に影響力を与えたりするのは、民主国家やそこに住まう人間としては害悪でしかありません。

かつてであればアメリカ軍が圧倒的な軍事力でドーン!とやっちゃって終わり、ということもあり得ましたが、ゲリラ戦・非対称戦が対米戦術として浸透している今では効果がある方が少ないでしょう。軍事力ではなく、また単なる綺麗事だけではないやり方で、独裁者を排除する仕組みが何とか出来ないものでしょうか。

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