地政学でいう緩衝国という存在は、珍しい存在ではありません。大国間が直接境を接して、毎日世界大戦の可能性が存在するのは、大国のどちら側にとってもメリットよりデメリットが上回ります。
だからこそかつてのアメリカとソ連、そして今のアメリカ、ロシア、中国間には緩衝国が存在します。アメリカ側としては日本や韓国、中国ロシア側では北朝鮮が東アジアに緩衝国として位置します。
緩衝国は超大国間にしか存在するわけではなく、例えば中国とインドの間にはネパールやブータンがありますし、中国とロシアの間にはモンゴルがどちらにも長い国境線を持っています。
インドとロシアの間にもアフガニスタンが存在し、アメリカの撤収によって中央アジアにおけるパワーバランスの変化がこれから注目されています。
東西冷戦の間はヨーロッパそのものが米ソの緩衝国でした。西ヨーロッパ諸国がアメリカ側、東ヨーロッパ諸国がソ連側の緩衝国であり、NATOとワルシャワ条約機構という軍事同盟がぶつかり合いそうでぶつかり合わない地域となっていました。
ソ連崩壊後、ヨーロッパがEUとしてまとまりつつある中、プーチン率いるロシアが再びロシアの緩衝国を作り始めました。ウクライナ東部を分割独立させ、ベラルーシはまさに今、ロシアの威を借る狐になっています。経済が危機的状況に陥ったトルコもエルドアン大統領が失脚すれば、ロシアと中国の影響を拒めないでしょう。
緩衝国は世界の分割を促進しているようで、遅らせてもいます。マルかバツか、1か0かの二者択一でしか選べないとしたら、対立は決定的になります。その間の曖昧な存在があるからこそ、大国同士の決戦の現実性が減ります。
敵対はするけれど交流はしている、友好関係ではないけれど敵対はしていない、といった関係は曖昧でいい加減のように思えますが、間にあるからこそ出来る役割です。
かつて4度の戦争が起きたイスラエルと周辺国は、1973年の第四次中東戦争を最後に大規模な紛争は起きていません。イランイラク戦争、湾岸戦争など中東のイスラム諸国間の紛争によって、対イスラエルどころではなくなったとも言えます。
イスラエルから見れば、自国が今後も生き残るためには、決定的に対立しているイラン、サウジアラビア、パレスチナ過激派との間に入る中東諸国を緩衝国化することが必要です。
だからこそ、バーレーン・UAE・スーダン・モロッコといったイスラム国家との国交正常化を進めたのでしょう。
繰り返しますが、イスラエルにとって、中東諸国同士が争っていれば自国の平和が訪れます。緩衝国同士の争いは、敵対する側にとって僥倖なのです。
アルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ紛争は、どちらも自国側の緩衝国としているロシアにとっては迷惑以外の何物でもありません。その理屈で言うと、日本と韓国の争いはアメリカにとってデメリットしかなく、そしてそれは中国やロシアのメリットになることは言うまでもありません。
中国とロシアの敵対的姿勢が増大し続ける以上は、どこかで両国が折り合うしかありません。もしそれが出来ないとしたら、アメリカから見たら緩衝国を一つ、「もしくは二つとも」切り捨てるしかなくなるでしょう。
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