ソフトパワーでロシアを敗北させたとしての戦後のあり方

ウクライナのゼレンスキー大統領による国会演説が3月23日に行われましたが、イタリア国会での演説を合わせ、G7の全ての国で議会演説を行ったことになりました。

彼の演説内容は各国それぞれに対して静かに煽る技巧が含まれていて、優秀なスピーチライターが付いているのではないかとも言われています。それがウクライナ政府内の人なのか、それともこの演説に当たって欧米のどこかから雇った人なのかは知りませんが、戦争では最前線にいる人だけが戦っているのではないということを思い知らされます。

議会演説の原稿を書くことでもロシアの軍事侵攻への対抗手段になり得ます。

冷戦崩壊後、アメリカのソフトパワーによる世界への影響力は強大なものでしたが、それは単なる言葉尻だけの「パワー」ではなく、軍事力以外の経済力や文化によって他国に影響力を及ぼしうるということを証明していました。

そして今、まさに軍事力というハードパワーでゴリ押しの侵攻をしてきたロシアに対して、ウクライナが国内では同じ軍事力で対抗しつつ、国外では演説によるソフトパワーで対ロシア包囲網の結束を固めようとしています。このウクライナ危機は、20世紀前半の戦い方をするロシアと、21世紀の戦い方のウクライナの戦争でもあります。

ロシアがこの戦争に完全勝利(ウクライナが政府も国民も完全にロシアに屈服して従属する状態)を勝ち取れるとは思えません。もしそうなったらなったでロシアの隣国はベラルーシ以外がNATOに緊急加盟しかねないので、それはそれでさらなる軍事危機が訪れてしまいます。

むしろロシアは良くて現状の膠着状態、悪ければ敗北してプーチン政権崩壊という事態も当然起こり得ます。私としてはプーチンやその同盟者が世界を支配する未来を見たくないのでそうなって欲しいのですが、そうなったらなったでロシア国内では価値観の逆転現象が起きるでしょう。

かつて第二次世界大戦後にナチスドイツの加担者がドイツなどで糾弾され罰せられた(今もって行われていますが)ように、ロシアでもプーチンとその戦争に協力していた人や組織は厳しい追及を受けることになります。

日本でも、太平洋戦争中は「鬼畜米英」と叫んでいた人が、戦後は教科書を黒塗りし、子どもは「ギブミーチョコレート」と米兵にお菓子をねだるようになりました。

その時に、重大な戦犯はもちろん裁かれるべきですが、ある程度のラインからは寛大に許すしかないでしょう。かつてナチスに強制されたとしてユダヤ人差別に加担した中東欧のヨーロッパ人や、憲兵や特高を恐れて戦争を賛美していた日本人が全員裁かれたわけではないように。

ある程度の寛大さは、戦後の安定化には必要です。それによって旧勢力や旧思想が残る恐れはあるのですが、少しでも加担した人間全てに重罪を与えてしまうと逆に敵対勢力が大きくなってしまいます。

問題はそれが出来るかどうか。寛容さを失いつつある西側諸国が、ウクライナ戦争の後の歴史に試されることになります。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA