ウクライナ侵攻に見る日中戦争・太平洋戦争の既視感

ウクライナ情勢は予断を許さない状況が1ヶ月以上続いています。これまでの、そして侵攻後のロシアを見るに、過去の日本特に日中戦争から太平洋戦争当たりの軍国主義時代の日本を思い起こさずにはいられません。

今のロシアとかつての日本を比較してみるなら、色々挙げられます。

今のドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国は、満州国・華北華中の傀儡政権とも比較できます。

ウクライナ侵攻後にプーチンが掲げた、ロシア人とウクライナ人は同じ民族だという大スラブ主義は、満州国が掲げた五族協和、あるいは日満華を包含した東亜新秩序のスローガンと似ています。

国内における報道機関への締め付け、反戦運動への弾圧は言うまでもありません。このウクライナ侵攻を「戦争」とは呼ばずに「特殊作戦」と呼んでいるのは、「日中戦争」ではなく「支那事変」と呼んだのとまさに同じです。

今回のウクライナ侵攻では、どうやら数日でキエフを陥落させてウクライナを支配下に出来るという甘い見通しを持っていたようですが、かつての日本でも一撃を与えたら中国は簡単に屈服すると思っていましたし、真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争でも考え方は同じでした。

日中戦争の緊迫化が対日禁輸措置を生み、ウクライナ侵攻がSWIFT排除をもたらしました。

あくまで、似ている部分だけを恣意的に取り出したものですので、もちろん似ていない部分もたくさんあります。我田引水の恐れは多分にありますが、全体主義国家が軍事侵攻する場合は結局は似た経緯を辿るものなのかも知れません。戦時下の日本と今のロシアではもちろん異なる点も多いですが、戦争の出口を完全に見誤いながらの戦争をしているのは同じでしょう。

とすると、今後のウクライナ情勢はプーチンが諦めない限りは戦局の泥沼化は間違いないですが、恐れるのは南京事件のような虐殺事件が、ウクライナのどこかで起きないか。もしかしたら既に起きているかということです。

あと経済的な面から言えば、少し前に、外国企業がロシアから撤退する場合に、条件を満たさなければ資産を没収するとプーチン大統領が宣言しています。これにより、もしも停戦合意して西側各国による経済制裁が解除されたとしても、痛い目を見た外国資本は少なくともしばらくの間は、ロシアに入ってこなくなるでしょう。ジンバブエやベネズエラのように外国資本の企業を国粋主義の下に政府が接収してしまえば、その後はその資本が入っていた産業の維持が出来なくなります。世界的なエネルギー不足はまだ続くでしょうから、原油・天然ガスの売却により外貨は多少は得られるでしょうが、中国資本にロシア経済を牛耳られるのではないでしょうか。

いざという時に政府に接収されるような市場にもかかわらず、入り込んでくる外国資本というのは、オープンで公平な資本と言うよりは、現地政府・独裁者と結びついたマネーになってしまいます。当然ながら本来は設備投資・人件費に回されるべき資本が独裁権力(独裁者・軍部・政商)などに流れてしまいますので、長期的な発展は望めなくなります。まあ、その点は今のオリガルヒも似たようなものですが。

産業が発展せず、経済も中国に根っこを掴まれた状態のロシアに残るのは軍事力の切り売りとなり、反西側勢力を軍事的支援で影響力を持ちつつ、国内統治をさらに締め上げていくことになっていくでしょう。

もともと自由主義も民主主義もプーチン体制下では中途半端なものでしたが、戦時中の日本における大政翼賛会・新体制運動や国家主義的な国民動員・監視体制に近いものが今後のロシアで出てくるきても不思議ではありません。

経済制裁によりロシア国民の不満が頂点に達して暴動が頻発し政権打倒に至る、というシナリオを思い描いている人は、日本に限らずアメリカや西欧にもいるでしょうけれど、経済制裁そのものが独裁権力を倒すことはまずありません。北朝鮮、イラン、ベネズエラなどを見れば明らかです。

むしろ経済制裁によって物資や外貨の欠乏が起きれば、贅沢品に加えて生活必需品を独占しうる権力者の独裁権力は強大化します。民主的な選挙によって政権交代しうる国家であれば、経済制裁が政権交代を生み出すでしょうけれど、そんな選挙が行われていないのであれば、国民はひたすら我慢を強いられるだけです。

戦時中の日本では「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」という節約強制を生み配給制でしのごうとしましたが、今度のロシアでもそのうちソ連時代からお馴染みの配給制に戻るでしょう。ソ連末期や90年代の経済破綻を経験している中年以上のロシア人にとっては、結構忍耐強いかも知れません。

日中戦争時の中国共産党・国民党軍は広大な奥地まで転戦することにより、日本軍の攻勢をしのぎ続けることが出来ました。今のウクライナは領土面積では中国ほどの広さはありませんが、西側諸国を味方につけることで広く豊富な支援を受けることができています。

かつての日本は戦局の泥沼化から脱することなく、さらに戦線が広がってABCD包囲網に最後はソ連参戦で決定的な敗北を喫しました。そこまでは至らずに、どこかで双方合意して状況の固定化が図られる可能性はあると思います。

この後のロシアは、どこかで踏みとどまってウクライナと停戦し、NATO諸国との関係を復活させることが出来れば、日中戦争・太平洋戦争をどこかでストップした場合の日本の別の世界線を見ることになるのかも知れません。

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