最も正しい行動が最も正しい結果をもたらすとは限らない

ウクライナ戦争やガザ地区の紛争によって印象も報道も薄れてしまいましたが、シリアの内戦も無くなったわけではありません。

アサド大統領、反政府勢力に加えて東からISの勢力が、北からクルド人勢力が入ってきて混乱に拍車がかかった状態がずっと続いています。欧米特にフランスが旧宗主国として強く関与する一方で、アサド大統領を支持するロシアやイランもいて、さらにイランと対立するサウジアラビアや、シリア北隣のトルコも当然関わっています。

内戦の原因はもはや一昔以上前になった「アラブの春」による革命を求める反政府勢力を、権力を失いたくないアサド大統領による弾圧したことでした。

「アラブの春」はチュニジアに始まり、北アフリカを席巻してシリアに到達したところで、この大規模な内戦を招くことになりました。もちろん民主化を求める革命が悪いわけではないのですが、独裁体制を敷いている独裁者がそれに反発するのは当然で、
「独裁者を倒せ!」
の一点張りでは激しい対立、というか弾圧が待っているのは世の理です。

シリア以外の国での革命が次々と成功していったことが、逆にアサド大統領の激しい抵抗を生み出したことは言うまでもありません。民主化を認めて権力と軍隊を手放せば、自分も家族も悲惨な末路をたどることが目に見えていれば、欧米に非難されても自国民を虐殺してでも、現状維持を求めてしまう心理も無理からぬことです。

また、アラブの春よりも前に欧米との関係を正常化していたカダフィ大佐が革命によって倒され惨殺されたことも、アサド大統領が権力を手放さない一つの理由にもなっていると思います。

独裁から民主化への道のりは、血塗られた革命によって行われることもあれば、国内の混乱や諸外国の非難を嫌いって経済発展を最優先させるために平和裡に民主化されることもあります。台湾や韓国はその成功した代表例でしょう。マルコス大統領を追い出したフィリピンも、そのキッカケとなった事件でアキノ議員という犠牲はありましたが、マラカニアン宮殿を囲んだ民衆を虐殺することはなく、大統領一族はハワイに亡命することで難を逃れました。

アサド大統領に対しても、中南米やロシアが亡命の非公式打診をしていたらしいですけれど、亡命したとして保護されるとは限りません。「人道に対する罪」で裁かれることになれば、逃げ続ける人生を送ることになります。

超国家的司法取引として、国連等国際機関が権力を手放す代わりに罪に問わない、ということをしても良かったかも知れませんが、これは後知恵ですかね。

「人道に対する罪」は人間と国家の平和を乱す者に対して厳しい処罰を下すためのものです。厳しい処罰を科すことにより戒めとするためです。

そして、正義を貫くのであれば、「人道に対する罪」がある独裁者を無罪放免には出来ません。しかし、それにより独裁者による激しい抵抗を生み、平和を生み出せないのであれば、失敗でしょう。

革命により民主化を行い、自国民を弾圧する独裁者を裁くという正しい(はずの)行動が、平和ではなく内戦を生み出すという正しくない結果をもたらすことになるのは皮肉としか言いようがありませんが、現在もまだ多くある独裁国家に対して、国際社会はシリアでの失敗に学んだ上での対応を取れるでしょうか?

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