ロシア人は強者に依存する

ロシアが始めたウクライナ戦争は全く終息の見込がありません。もし何らかの停戦合意に至ったとしても、それは平和の訪れではなく、戦いの一時休止にしかならないでしょう。ウクライナにとってみたら旧来の領土を全て取り戻さない限りは納得出来ないでしょうし、ロシアにしてみたらウクライナの国歌と民族を否定して始めた戦争である以上はウクライナを完全に取り込まない限りは終わるわけがありません。

ロシア以外、特に西欧社会から見れば、ロシア人はプーチン大統領の強権独裁体制に怯えて、やむを得ず彼を支持しているだけであり、プーチンが失脚あるいは死去すればロシアの民主主義が復活する、という短絡的な意見もあるでしょう。

ただ、歴史上・世界上のいつどこの独裁体制においても同じですが、その体制を心から支持して納得して協力している民衆もいるものです。それは戦前戦中の大日本帝国においても、ナチス体制下のドイツ第三帝国においてもです。

今のロシアにおいても、民衆の一部もしくは大部分は、プーチン大統領を欧米からの解放者として支持し、応援しています。批判的な反プーチンの人々ももちろん、それなりの数はいるとはいえ、それが大半であるとは言えないでしょう。むしろ、今のプーチンのやり方が手ぬるいと逆の意味で批判する極右勢力もかなり存在するくらいです。

ソ連崩壊後、プーチン政権樹立前のロシアが欧米によって搾取され、虐げられ、弱体化させられたという主張は、実際にその時代を生きたロシア人チュ高年者にとっても、その時代を知らない若年層にとっても、それなりに受け入れられ、信じられています。

実際に、戦略的な国家レベルでの経済侵略があったかどうか。少なくとも、ロシアがソ連以来のアメリカの敵だからターゲットになったのだ、という主張は無理があります。

なんせ90年代後半における世界的な通貨危機では、長年のアメリカの同盟国である韓国や、フィリピン・シンガポール・マレーシア・インドネシアといったドルペッグ制を敷いていた国々の通貨に大打撃を与えました。日本でさえ金融不安の原因になったくらいです。ロシアだけが通貨危機によって経済的な攻撃を食らったわけではありません。

確かに、長きに渡って共産主義体制下にいたロシア国民にとっては、世界的な資本主義経済に巻き込まれて多くの財産を失ったのが、欧米による攻撃だと思ってしまうのも無理もありません。被害妄想に囚われると、何に直面しても自分が狙われていると思うものです。

だからこそ、かつてのソ連のような強いロシアを復活させるプーチン大統領、というイメージがその支持につながっています。

そもそも、ロシアの歴史から言って、強大な権力を持つ政権や独裁体制に対して、本能的に忌避するよりは依存するくらいの方が多かったでしょう。

モンゴル帝国に蹂躙され支配された時代を過ぎた後に、ツァーリが支配を強め、ロシア帝国の成立によって農奴制が確立しました。

そのロシア帝国が弱体化し、さらに革命によって崩壊すると、日本も加わった列強によるシベリア出兵や内戦で混乱する中、共産党とレーニンによる中央集権国家が出来上がりました。その後のスターリンやブレジネフといった権力者のしてきたことは言うまでもありません。

そのソ連が崩壊した後、10年続いた「弱いロシア」を経て、現在はプーチン率いる「強いロシア」の真っ只中です。

このプーチン体制が何らかの理由によって崩壊したとて、西欧諸国のような公正な民主主義による平和的な権力というのは、ロシアにはおそらく生まれないでしょう。

それなりの期間の混乱(もしくは内戦)を経て、また強権的な権力体制が確立されるんじゃないでしょうか。歴史のくびきというのは、結構根深いものです。

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