パレスチナ国家承認は可能か、そして、するべきか

最初に、イスラエル軍によるガザ地区でのジェノサイドは許されざる蛮行です。それを踏まえた上での話になります。

そして、パレスチナを国家承認することで、その蛮行が終息するのであればするべきですが・・・、というのがこのnoteの主旨となります。

現在のパレスチナを国家として承認することが可能なのかについて、まず、国家が別の国家を承認するには、承認される国家が国家たるべき条件を満たしているかどうかを考えてみます。

国家とは、主権の確立、国民の存在、領土の確保が出来ていないと、国家として認められない三要素があるとされています。

現在のパレスチナ(国家とも地域とも限定しません)には、まず国民たる民衆は存在します。領土についても今まさにイスラエルが侵略している地域は、パレスチナ以外の国家が占領していたわけではありません。最後に主権ですが、これについてもどこか特定の国家の影響が公的に認められるわけではありません(当該地域で権力者たるハマスへの影響力を持つ国はありますが)。

ということで、最低限の条件は満たしているものと考えられます。まあだからこそイギリスやフランスが国家として承認しているわけです。

逆に考えると、イスラエル政府と軍の行動を見るに、領土を奪い、国民を皆殺しにすれば、パレスチナという未承認国家は国家でなくなります。現ネタニヤフ政権がそれを狙っているかはともかく、イスラエル内の極右勢力の最終的な目的はそれでしょう。

次に、日本政府・日本国がパレスチナを承認するべきかどうか。

世界中に存在する「自称」国家の中で、日本政府が承認していない、いわゆる「未承認国家」は複数存在しています。日本人の誰もが知る日本政府未承認の国家は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と中華民国(台湾)です。これにパレスチナを加えた3カ国は、実質的な外交関係を持ちながら未承認という宙ぶらりんな状態となっています。

それ以外に、アブハジア共和国(ジョージアの一部)、南オセチア共和国(ジョージアの一部)、沿ドニエストル・モルドバ共和国(モルドバの一部)といった、ロシアの軍事的支援により独立状態になっている国や、サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ)、北キプロス・トルコ共和国(キプロスの一部)、ソマリランド共和国(ソマリアの一部)のように内戦や他国軍の強い影響下にある国もあります。

また、タリバン復権後のアフガニスタン政府についても認めていませんし、軍事クーデター後のミャンマーも同様です。

未承認国家を承認するかどうかについて、日本政府(外務省)として明確な基準が内々であるのかどうかは知りません(ただ、北朝鮮と台湾については現代史的に理由は明白です)。しかし独立や国家承認を求める国や地域を無制限に認めているわけではないですし、今になって急にパレスチナを承認し始めた欧州各国についてはよく分かりません。なぜ以前は認めず、今になって認めるのでしょうね。

日本政府がパレスチナを国家として承認しないのは非人道的だ、という意見があるのは理解できますが、個人的には非常に難しい問題だと感じます。

まず、日本政府としてユダヤ教徒イスラム教の宗教戦争に関わるべきではないと思っています。これは今に限らず以前からです。どちらが正しいのかについて、理屈でケリがついたり裁判所が強制的権力をこうしんできるものならともかく、世界的規模の宗教対立について白黒はっきりさせる立場を日本政府が取るべきではないです。アメリカのようにユダヤロビーが強烈な権力を持っていたり、逆にイスラム教国家のように国是としてイスラエル寄りや中立的立場が不可能ならともかく、日本が立つべき位置はまずは中立です。

今回、石破政権がパレスチナを国家承認することを見送ったことについて、アメリカ追従だと批判があります。しかし、数年前に国際的問題になった、イスラエルの首都をエルサレムにする件について、トランプ政権が積極的支持をしましたが、かつてのクリントン・オバマ両民主党政権も支持していましたけれど、日本は認めませんでした。

軍事的脅威によりジェノサイドが起きているパレスチナの国家承認と、エルサレム首都の承認は次元が違うと言えばそれまでですが、元も子もないことを言えば、パレスチナを国家として承認したところでイスラエル軍の暴虐が止まるわけではありません。それで止めるくらいならそもそも軍事侵攻なんかしないでしょう。

日本政府として、未承認国家による主権国家へのテロ行為を見逃して国家承認すべき、ということになると、北朝鮮も認めるのか、という話になりかねませんし、ロシアがウクライナから奪い取ったクリミアと東部4州は認めないのか、ということにもなります(ロシア側は侵略の理由を欧米によるウクライナを奪う企みを防ぐためとずっと主張しています)。侵略された側を無条件に承認するというわけにはいきません。西サハラ地域もモロッコから酷い扱いをされていると主張していますし、沿ドニエストルも同様ですが、日本が国家承認すべきという意見は目にしたことがないですね。

パレスチナを国家承認すれば、国際法が適用されて国連による抑止力が働く、という主張も疑わしく、だったらそもそもロシアによるウクライナ、それ以前のジョージアへの侵攻も止められていたはずです。悪意をもって軍事侵攻する強国を止めるすべは、未だに国際社会が持てていない以上、できることは限られます。

先にも書きましたが、パレスチナを消滅させる方向でネタニヤフ政権が短絡的に強行することは大いにあり得ます。そして、国家が無くなった後、時間が経てばそれが既成事実化して現状変更が不可能になります。

今できるとすれば、ガザ地区の住民を別の地域に大々的に移送することくらいでしょう。イスラエルが主張する領土内に、パレスチナの領土と主権と国民がいなくなればイスラエルの軍事行動は収まります。ただ、移送を受け入れられる国があるかどうかが問題ですし、それをするにはネタニヤフを一時停止させて懐柔する必要があります。

正義だけを貫いてもう一方の正義を否定するのは、結局問題を激化させるか相手を消滅させるかという結果にしかなりません。どちらの正義が正しいのかということを、日本政府がはっきりいうべきではありません。そんなことに絶対的かつ中立的な結論などないのです。

そもそもイスラエル建国時に自国内のユダヤ人を送り込んでユダヤ人の構成比率を減らしてユダヤ人ロビーの影響を受けなくなった国が文句言うのもなんだかなあと思います。もっと言うと、100年前の多重嘘外交でパレスチナ問題を作り出したイギリスがなんで今さら騒いでるのかとも思いますけどね。こんなことを今さら書くと、今さらそんなことを言うな、と言われるのでしょうけれど。

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