ワークライフバランス無視発言を巡って

先日の自民党総裁選で勝利を収めた高市早苗新総裁が、その時の演説で、ワークライフバランスを捨てるとの発言をしていました。私もそのNHK中継は見ていましたが、あくまで個人的な話として、自分が休みを顧みることなく自民党と日本国のために働きますよ、という文脈として受け取りました。

はー、大変やねえ、まあ頑張ってやー

くらいに他人事として私は思っていたのですが、一晩経って各ニュースメディアで取り上げられている様子を見ると、世間的にはそんな他人事として見ていない人もいるようです。

組織のトップに立つ人、例えば企業の社長(特に創業オーナー)とか、あるいは個人事業主としてバリバリ働いている人が、高市新総裁の発言を聞いて

よし、自分も昼夜を惜しんで働くぞ!

と個人レベルで意気込むのは別に良いのです。結果も健康も本人の責任なのですから。しかし、高市発言を根拠にしてワークライフバランスという概念そのものを否定したり、労働者の残業規制の撤廃などを声高に主張するのはいかがなものかと思います。

そもそも、ワークライフバランスを犠牲にしてでも働き続けられる人は、体力があるということの他に、自分で自分の仕事そのものの決定権がある人です。他人(会社や上司)に仕事を振られる側の人に関しては、残業規制が必要です。

日本の残業規制は基本的に労働者の中でも「管理監督者ではない人」を対象にしています。自分で自分の仕事の量や手順やメリハリを決めるのが難しい、いわゆるワーカーとかプレーヤーとかいう立場の人です。決定権が無い人ですね。こういう人の反対側に、管理監督者としていわゆるマネージャーがいるのですが、そのへんになると、業務時間に縛られずに結果・成果を求められます。この点で、残業規制をすべき人と無くてもいい人に別れます。

昨今では、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制なども増えてきました。こういう制度を使った場合は、残業規制がある程度緩和されます。ただ、これもワーカー・プレーヤーへの過度な残業命令の隠れ蓑にもなりかねないですし、そもそも誰もがこの制度を使って働くことができるわけでもありません。

あくまで過労死や精神疾患を招かないため、また労働者の家族との問題を減らすために、残業規制は必要です。

一方、一人会社の社長とか個人事業主のような、自分が選んだ好きな仕事、好きな業務であれば、残業どうのこうのとか関係なしに働いても、そうそうくたばりません。もちろん、フリーランスとして強大な権力を持ったクライアントから
無茶を言われて・・・ということはあるでしょうけれど、それは長時間労働の問題ではなく、フリーランス法や下請法の規制対象でしょう。

ここでクソ経営者が従業員に対して、

自分が望んで選んだ仕事なのだからひたすら働け、

とか、

やっている仕事を好きになれ

と命令することもありますが、そもそもそういうことを命令している時点で、自分で選んだわけでもなく、好きなわけでもなくなります。それは結局やり過ぎたら「くたばる」仕事です。

そもそも、今回の高市発言で反応している人たちって、普段は
「政治家の言うことなんか信用できない!」
とか言ってそうな感じなのですが、結局のところ、
「人は自分が信じたいものを信じる」
ということなんでしょうね。

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