アメリカ合衆国がトランプ大統領就任以後、保守的というか内向きになって衰退していくのではないか、という心配を持ち出す人がいますが、個人的にはそもそもアメリカ合衆国という国は本来内向きの国家であって、一時的に回帰現象を起こしているだけだと思っています。
18世紀末に大英帝国から独立してから基本的にはヨーロッパからアメリカ大陸への干渉をいかに防ぐか、ということが重要であり、アメリカから他の国に干渉する、ということはハワイ併合やフィリピンの植民地化を除けば非常に稀でした。
19世紀後半、太平洋の西側にある中国進出を目論んで、その流れで日本にも開国を迫ったわけですが、結果的に中国進出は上手く行かず、最終的には日本との太平洋戦争にまで発展してしまいました。
この戦争には勝ったものの、当の中国では共産党政権が成立して約40年間、中国進出はままならなくなります。改革開放以後の中国とは経済的な結びつきが強まりましたが、中国が力を付けすぎたことで米中貿易戦争にまで発展し、結局は中国進出が頓挫しかかっている、という状態です。これは以前にもnoteに書いたくだりです。
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そんな風に世界最大の市場を抱える中国にはそれなりに執念を燃やしてきましたが、本来のアメリカ合衆国は外国との関わり合いはあまり望んでいない国でした。第一次世界大戦では終盤に参戦して、その後のワシントン条約までは世界に関わっていましたが、ウィルソン大統領が提唱して設立された国際連盟には議会の反対で参加しなかったことは有名な話です。
それが積極的に関わるようになったのは第二次世界大戦中、ナチスドイツとの戦いにイギリスを助ける形で加わったのと、前述の日本との太平洋戦争が勃発してからです。戦後、連合国の主体として国際連合を創設し本部をニューヨークにおき、マーシャルプランを始めとする経済援助とNATOによって西ヨーロッパを自由民主主義陣営として確保しました。極東でも日本と韓国とも軍事同盟と経済援助で強い影響力をもち、冷戦崩壊後は唯一の超大国として全世界的に干渉し続けてきました。
その無理がたたって反発も抑えきれなくなったのが、911の同時多発テロであり、中東でのISの勢力拡大でもありました。その流れでトランプ大統領の就任を考えると、内向きの大国アメリカへの揺り戻し現象としてはそれほどおかしな話でもないと思います。おかしいのは大統領の対応の仕方ですが、そういう人間が選ばれたということはそれだけ共和党候補がアメリカの歴史を体現できなくなっているのでしょう。
トランプ大統領が明らかに意識しているレーガン大統領は、丘の上の小さな家に住む家族をアメリカの象徴として国民に提示していました。それが移民国家アメリカ合衆国の正しいイメージかどうかは別として、世界中を股にかけて活動するのがアメリカという国家の伝統ではない、ということは示しているでしょう。
アメリカの国内でも進化論を否定する学校とかあるらしいですし、都市部と地方での格差というよりは別の国のようなものです。実際そもそも連邦制ですし。
世界中の国からはアメリカ合衆国は開明的で侵略的のように思われているでしょうし、実際この80年近くはそうしてきたわけですが、それがアメリカ合衆国の本質なのかというと疑問が残るところです。
トランプ大統領による保護貿易を求めるような経済外交や、シリアからの撤退、韓国や日本への駐留費用負担増額の要求などをみると非常に内向きな政策に思えますが、大統領がドナルドトランプでなくても、程度の差こそあれ内向きになる時代情勢であると思います。
言い換えると、共和党と民主党から出てきたかつての大統領はほぼエリートであり、アメリカが外国に干渉することで世界も栄えアメリカも一層栄える、という理念を党関係なしに共有してきたということです。そしてそれが行き詰まりつつあるからこそ、トランプ大統領誕生という衝撃がアメリカ合衆国を襲ったのです。
トランプ大統領の一期目の終わりも近付いてきましたが、これまで彼が仕掛けた、イラン核合意の否定、キューバとの国交回復の否定、北朝鮮核開発問題、EU・日本・中国などとの貿易赤字解消などはほぼ、進んでいません。アメリカの内向き具合がまだ足りていないと有権者が判断するなら、トランプ大統領が再選して二期目でも同様の政策を採るでしょう。
いや、内向きになるのは間違っている、あるいはもうこれくらいで良いはずだと有権者が感じているなら、民主党の候補が勝つのかも知れません。個人的にはまだ内向き程度が不足しているのかなとは思います。
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