新しいロシアが生まれるのか

プーチン大統領が現在の任期満了によってその職から退くことを先日示唆しました。

プーチン大統領、2024年の退任示唆 年末記者会見
https://www.afpbb.com/articles/-/3260395

はっきり辞める、といったわけではないようですし、メドベージェフ大統領を挟んでの復帰という手段を用いた過去を考えると鵜呑みには出来ませんが、今のロシアの行き詰まりも頭にあるのかも知れません。

怒れるロシア市民、プーチン氏支持率に陰り
公共サービスの悪化に対する不満の声が噴出
https://jp.wsj.com/articles/SB11015226514967544603204586098871284350378

アメリカによるシェールガス革命によって原油価格はずっと低いままです。それによって石油資源国家はどこも経済的に苦しい状態が続いています。とはいっても資源がない国から見たら石油を掘って輸出することで外貨を得られるというのは国家経営的にかなり楽を出来るはずです。それでも上手く行かないのであれば、国家として利益の再分配が適切に行われていないことが原因です。

もちろん国際社会による経済制裁によって簡単に輸出できなくなる場合もありますが、イランのように産油国なのに国民がガソリンを楽に手に入れられないというのは国家としては破綻寸前とも言えるでしょう。

ロシアの場合はイランほど苦境に立っているわけではありませんが、それでも国民の抗議行動は年々増えています。

大統領ではなくロシア政府や首相に対する非難もあるでしょうが、ロシア共和国の究極の責任はプーチン大統領に帰します。石油による利益を国民サービスやインフラに適切に分配せず、国際社会における発言力・影響力のために軍事費に回している以上は、国内だけで完結する生活を送っている国民が不満を訴えるのは当たり前でしょう。

冷戦時代のソ連は軍需産業にリソースを集中させることによって、巨大な経済力を持つアメリカ合衆国と渡り合っていましたが、70年代には限界が訪れました。80年代に入ると行き詰まりは顕著になり、ブレジネフ→アンドロポフ→チェルネンコといった高齢すぎる指導者が相次いで交代しました。どうしようもなくなり改革派のゴルバチョフが出てきて、ペレストロイカ・グラスノスチといったキーワードを掲げて何とかしようとしましたが結局どうもならず、ソ連は崩壊していきました。

今のロシアも経済的に苦しんでいる状態なのに、ウクライナやシリアなどにも軍事的圧力をかけています。また新型の超高速ミサイル兵器の開発も行い、アメリカやその同盟国への脅しも健在です。しかし、それらの軍事力は当然ながら莫大な国費によってもたらされるものです。さらに言うと、アメリカの半導体産業のように兵器開発がもたらすイノベーションを民間が活用出来るような柔軟な社会でもありません。ロシアが軍事力にお金を使えば使うほどジリ貧になっていくのは目に見えています。

だからといって、一気に今さら方針転換も出来ないのでしょう。90年代にエリツィンの元で苦しんだ国民は強いロシアを復活させるというプーチンに夢を見ました。彼の手腕もさることながら、ロシア経済の復活は世界的な原油価格の高騰にも支えられてたのであり、原油価格が低迷すればまたロシア経済が低迷するのも当然なのでしょう。

ここで必要なのは強いロシアをもたらすプーチンではなく、新しいロシアを作る指導者のはずですが、スムーズに移行できるのか、それとも冷戦崩壊後のような混乱がまた繰り返されるのか。

ロシアの圧力が弱まれば中国の出方も変わるでしょうし、北朝鮮の頼る先が減ることにもなります。日本にとっては北方領土のみならず、それ以外でも関係してくることは多いはずです。

ロシアは自国領土を大きくし続けてきた国です。ソ連時代に最大の領土を得て、ソ連崩壊後はヨーロッパ・中央アジアにおいて広い地域を失いました。その失地回復の一手がクリミア半島併合・ウクライナ東部での傀儡国家の建設でした。バルト三国やベラルーシなどにも手を出しかねないことを考えると、かつての日本が性急に北方領土の二島返還に合意しなかったのはかえって良かったのかも知れません。

四島返還を諦めるにしろ諦めないにしろ、二島返還という選択肢はありました。ただ、そこでもし二島返還をしていると今のクリミア半島のように、住民投票→独立宣言→軍隊展開→ロシア併合というシナリオが進んでいたかも知れません。

失った領土に対するこだわりは強いのがロシアです。ロシアが極東において北方領土以上に国境を伸長させる可能性は低いでしょう。それよりも中央アジアや中東やヨーロッパの方にこだわりがあるはずです。

プーチン後の新しい指導者がロシアにもたらすのは、経済崩壊しながらも軍事力を無理して維持する国家なのか、民主主義に基づく開放的で自由な社会なのか。日本にとっても無関係な話ではないでしょう。

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