ショートショート「輝く虚栄」

「さあ、早くしてちょうだい。パーティまで時間がないんだから」

「奥様、そのご要望にお応えするわけには……」

「何言ってるのよ! ちゃんとお金は払うんだから、つべこべ言わずにさっさとしなさいよ」

「しかし……」

ある街のある美容院のVIPルームで、妙齢の女性が若い美容師にきついロ調で注文していた。

「全くもう! そうしなきゃ、今夜のパーティで皆の関心を集められないじゃないの! 超セレブの私が、その他大勢に数えられるなんて、耐えられるわけないのよ! 上得意の私に逆らう気? それとも旦那が死んで未亡人になったからと言ってあなたも馬鹿にしてるの!?」

ヒステリックに甲高い声をあげる女に押されて、美容師の男はしぶしぶ求めに応じることにした。

「かしこまりました、奥さま。それではご注文通り、額にダイヤモンドを埋め込み、指の先にはサファイア・ルビー・エメラルドをちりばめます。よろしいですね?」

「ええ、いいって言ってるじゃないの」

「それでは奥様。こちらの書類にサインをお願いいたします」

と言って、男は保険契約書のような紙を取り出した。

「はい、これでいいんでしょ」

中年の女はすぐさまサインをして、書類を返した。

「では、これより埋め込み手術を行います。それによってお客様の蒙むる損害は、当店は関知いたしませんので、その点をご了承くださいませ」

「はいはい、早くしてよ。もう」

 二十一世紀の半ばを過ぎたこの時代、女性達が自らの美を競い合う意識が高まった。ついには、自分の体の各部分にきらびやかな宝石類を埋め込んで、その美しさを見せつけるようになった。形成医学が急速に進歩していたので、埋め込み手術の失敗や、術後の問題を招く心配もなかった。爪や耳たぶといった箇所には、皆、気軽に手術を行って宝石を埋めていた。上流階級に属し、社交界において自慢しあうことが楽しみのような婦人達は、大きく胸の開いたドレスにマッチするように、鎖骨の辺りや、スリットからのぞく足に宝石を埋めたりして、競い合っていた。

 手術が済み、決して安い額ではない料金を支払って美容院から出てきた、先程の女性は、街でも注目の的だった。皆、驚いたような顔で、女性を見ていた。その多くの視線を受けて、女性は有頂天だった。

(ふふん。これでパーティでも注目の的に違いないわ!)

 そして実際、パーティでは彼女は多くの人々から多くの視線を浴びた。それに関しては満足だったが、ただ疑問も残った。みんなが自分から視線を外すときに笑っているようにも見えたのだ。

(何でみんなあんな目で私を見たのかしら。羨ましそうな、悔しそうな顔をするものとばかり思っていたのに。変な人ばっかり)

 自分を乗せたタクシーが自宅に着き、玄関に立った。しかし、彼女は家の中に入れなかった。自宅のセキュリティシステムが、額のダイヤによる光の反射のために顔を認識できず、指の先の宝石によってつぶされた指紋を照合できないまま、彼女は呆然と立ちつくしていた。

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