現行の個人情報カードいわゆるマイナンバーカードが致命的に使いづらいことは間違いないのですが、全てをオンラインだけで利用することを前提にするシステムというのも若干の不安も感じます。
今のマイナンバーのシステムが、個人情報の漏洩や国家による国民管理を不安視する人たちによる強硬な反対もあり、使いやすさが決定的に欠如したようなものになってしまっています。今回のコロナ禍における給付金申請でまさにその欠点が露出しました。もっと使いやすいものにすべきですし、そもそも国家が国民を管理するための番号を持つのは当たり前だと思いますが、そのこととは別に、オンラインでの給付申請が結局使いづらくて書類の方がマシ、という結果になってしまったのはマイナンバー賛成派にとっても何のこっちゃわからない残念な出来事だったと思います。
個人的にはマイナンバーカードが健康保険証・運転免許証・雇用保険被保険者証・年金手帳あたりをカバーするようになってほしいですし、あるいは薬局でのお薬手帳も兼ねていればそれ1枚で過去の処方箋履歴もたどれるようになりますし、電子マネー決済やクレジットカード機能も搭載可能でしょう。
ただ、ユーティリティとセキュリティは本質的には対立する概念です。使いやすさを優先すると安全性・機密性が損なわれるのは間違いありません。その逆もまたしかりです。この外出自粛・出勤不可の流れの中でも、FAX業務のために職場に出勤しないといけないこととか、PCR検査での病院や保健所のやり取りでFAX必須な場合があったこととか、マイナンバーの混乱以外でもどこが電子立国・電子政府だと言いたくなるような体たらくでしたが、100%オンラインに移行しきってしまったら、それはそれでシステムやネットがダウンしたときに何も出来なくなってしまいます。
もちろん、ネット回線やサーバは冗長化が可能です。政府側の冗長性だけではなく、利用する国民もネット回線を複数持っていれば、あるいは多くの家庭をカバー出来るだけのWi-Fi網を作ってしまえば、アクセスが全て途絶えることは無いかも知れません。
しかし、冗長性を持たせていても思わぬところでトラブルが起きることがあります。
Googleにドメインをブロックされたウェブサービスが「Cloudflareに乗り換える」と恨み節 – GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20200605-google-block-gitbook/
GitBookではサーバーレスや複数ノードによるフェイルオーバー可能な構成を取っており、可用性には力を入れていましたが、ドメインは避けられない単一障害点とのこと。
こういったことも起こりえます。マイナンバーシステムのドメインが使えなくなったり乗っ取られたりしたときに、すぐに別ドメインを使えるようになっていればいいのですが。
利益と効率性を最大限に追求しないといけない民間企業は、全てをオンラインに移行する方がメリットがあるのは間違いありません。しかし効率性を落としてでも対象全てをカバーしないといけない政府・自治体のシステムでオンラインに全振りするとトラブルが起きたときにかえって不便が大きくなり得ます。
今回の給付金申請では、申請者がオンラインで申請しても、自治体職員が手作業でアナログな手続きをしないといけないという問題がありました。その一方で申請書を郵送する方式も、費用や作業負担が大きいという問題もあります。
これらをむしろ逆手に取ったやり方がニュースになっていました。
「手間がめちゃくちゃ減った」 郵送とオンラインのハイブリッド給付金申請、非エンジニアの市職員が開発 経緯を聞いた (1/2)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2006/01/news124.html
加古川市は給付金の迅速な支給を行うため、郵送方式とオンライン方式の他に、それらを組み合わせたハイブリッド方式を考案。5月27日から運用を始めた。ハイブリッド方式は、給付金の案内用紙を各世帯に郵送し、申請はオンラインで受け付ける。
市民は案内用紙とスマホがあれば申請できる仕組み。申請の受け付けページで、市が各世帯に郵送した案内用紙記載の照会番号、世帯主の情報、振込先口座の情報を記入。身分証明書や通帳の写真をスマホで撮影してアップロードすれば申請が完了する。
これならマイナンバーカードを持っていない人でもネット経由で簡単に申請できます。これが唯一の最適解ということでもないでしょうし、他人が成りすますかも知れないというセキュリティの懸念もあります。ただ、それは通常の郵送方式でも同じでしょう。あくまで今回の特別給付金申請にとって最適な方式かも知れないということです。
ユーティリティとセキュリティの両立は難しいものです。90年代後半から利用され始めた、個人向けのインターネットバンキングでも今はかえって昔よりも使いづらくなっているのではないかと思うこともあります。もちろん、成りすまし、ハッキングなどによる個人や銀行の被害が増えたため、セキュリティを重視した結果です。そのためネットバンキングで振り込むより、クレジットカード・PayPal・電子マネー決済などで支払をした方が手っ取り早くなってしまいました。いわば、預金機能と支払機能を個人の資産管理の中で分離して使い分けるハイブリッドです。
オンラインのシステムはどうしてもシステム障害やハッキングの恐れがあります。扱う金額が巨大になればなるほど、攻撃者の興味を引くことになってしまいます。
給付金申請のような制度については、今の世の中のセキュリティレベルではその都度ハイブリッドなシステムを構築するのが、もしかすると一番効率性と安全性を高いレベルで実現出来るのかも知れません。
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