大阪のとあるセブンイレブンの店のオーナーによる問題提起から、コンビニの24時間営業についての妥当性がいろいろと取り上げられるようになりました。双方共に言い分がありますし、ここでそのどちらか一方が正しくて、もう一方が間違っている、と断定するつもりはありませんが、コンビニに限らず小売店の24時間営業の必然性は今後も問題視され続けるでしょう。
今回のコンビニ24時間営業問題は、現在の労働力が売り手市場になっているため、夜間働いてくれるアルバイトが集まらず、店のオーナー(及びその家族)の労働力への依存が高くなりすぎていることが発端です。夜間の時間帯での時給を少々高くする程度ではアルバイトが集まらなくなっています。昼間の時間帯でも求人がいくらでもあるのですから、少々高いくらいではわざわざ夜間に、しかも少人数ですからトラブル発生時は大変ですし、強盗に襲われるかも知れない、というリスクを冒してまで応募してくる求職者はなかなかいないでしょう。
しかし、極端な例えになりますが、コンビニの夜間勤務の時給が10,000円なら求人への応募は殺到するでしょう。というかそんなコンビニがあるなら私がそこで働きたいです。では時給5,000円ならどうでしょうか? それでもかなりの求職者が集まるでしょう。では3,000円なら? 2,000円なら? そうやって下げていけば、どこかで釣り合いが取れる金額があるはずです。それが自由主義市場における労働力市場の理論的な在り方です。
しかし、現実問題として夜間のアルバイトにとんでもない時給を払うことは出来ません。そもそも夜間の売上・粗利が少ないので、払える人件費には限界があります。来店者数が夜間は経るのにコンビニにおける商品やサービスの価格が昼間と同じなのですから当然です。。一商品、一サービスの売り上げが同じなら、人件費が低い時間帯に売った方が粗利が高くなります。そうなると、夜間にも営業している必然性がそもそも存在しなくなります。当たり前ですが来店者が少ない時間帯は店を閉める、というのは経営的に見て非常に合理的な話です。
コンビニに24時間営業の厳守を求めるコンビニ本社の言い分として、夜間でもコンビニを必要とする人がいる、というのがあります。確かに、かつては夜間にしか買い物が出来ない、という人に取ってはありがたいものでしたが、現在はAmazonを始めとする通販業者が飲食品も扱いますし、宅配ボックスも増えています。夜間に空いているコンビニが無いと生きていけない、ということも以前よりは少ないのではないでしょうか(その分宅配業者が大変ですが)。また24時間営業していることで認知度が上がり昼間の時間帯でも売上が上がる、という理屈も存在します。しかし、それならその昼間の利益分で夜間の時給をもっと高額にすればいいのですが、そこまでは出来ない程度の売上しかない、ということが問題です。
売上・利益から出せる人件費と、求職者に対して提示できる時給が釣り合いが取れるポイントがあるはずです。もしそれが存在しないのであれば、そもそも24時間営業というビジネスモデルそのものが破綻していることになります。
そこで提案というか、採用されるわけはないと思いますが、これも最近話題のダイナミックプライシングをコンビニの商品・サービスに適用してはどうでしょうか? つまり、夜間は値段が高くなるということです。POSシステムで全商品を管理しているのですから、時間帯によって価格を変更するのはアナログ時代に比べたら簡単なはずです(もちろんシステム開発が大変だとは思いますが)。飲食店では夜遅い時間帯に夜間料金が上乗せされるのは良くありますが、それと同じです。例えば、21時まではポテトチップスが100円だが23時までは120円、1時までは150円、3時までは200円、5時までは150円、7時までは120円、8時を過ぎたら100円に戻る、といった感じでまさにダイナミックに値段が変わるのです。粗利と時給が釣り合いが取れるところまで、夜間の人件費を消費者が負担してしまえばいい。値段が上がれば客は減ります。昼間に行ったら安いのに夜中に行ったら高い、ということでしたら当然です。しかし、コンビニ本社が言うように、本当に夜中にコンビニを必要とする人は、「本当に」必要なら夜間は単価が上がっても利用するはずです。その分をバイト給与に回せば人手が確保されるはずです。もし夜間割増しの影響で客が減りすぎてしまったらそれこそ24時間営業に正当な理由がなくなります。少なくとも自由資本主義市場において、夜中にコンビニを営業する合理性がないということです。コンビニは営利企業であり公共サービスではないのですから、損する範囲での営業は辞めるしかありません。複合機での住民票印刷など本物の公共サービスのためにも24時間営業が必要、という主張をするのであれば、夜間のコンビニ従業員に対して税金から補助を出すしかありません。どこかで誰かが負担をするしかないのです。
そもそも、法律によって深夜就業に割増賃金を払わなければならないと規定されている割増分を、これまでは事業者側が負担してきました。社会を資本家と労働者に二分するマルクス主義に影響されているのは労働関連の法律だから故だとは思いますが、資本家の中には強い立場と弱い立場があるということが労働法においては考慮されていません。企業間での問題ですから独占禁止法や公正取引委員会が規制する問題となっています。コンビニ本社がフランチャイズ契約を盾にして、フランチャイジーである各加盟店を締め付けすぎたら、公正取引委員会の出番となるでしょう。そこまで来ると、フランチャイザーであるコンビニ本社にとってみてもブランド価値の毀損という問題に直面しますから、どこかで妥協せざるを得ません。あまりにコンビニ経営が過酷だということが広まりすぎたら経営者が減ってしまいますから、直営店ばかり増えることになり、当然ながら本社自体の経営リスクが増してしまいます。そこまで行くくらいなら、限定的ながら24時間営業を諦めた方がマシです。
結局のところ、コンビニの24時間営業というシステムは、夜間アルバイトを若者世代で補うことが出来る時代にしか適応できないビジネスモデルと言えます。少子化によって社会が労働力不足に陥り、夜間にそこそこの時給で働いてくれる若者がいなくなってしまったら成り立たないのです。現代にそぐわないビジネスモデルをあくまでフランチャイザーがフランチャイジーに強要し続けた場合、最初に痛い目に遭う(既に遭っていますが)のはフランチャイジーの方ですが、フランチャイジーにのみ負担をかけさせ続ければいずれはフランチャイザーの方にも手痛いしっぺ返しが待っていることでしょう。
最後に、おまけというわけではありませんがダイナミックプライシングは値段を上げるだけではありません。値段を下げる商品があってもいいでしょう。夜中3時が賞味期限の500円弁当であれば、21時までは500円、23時までは400円、1時までは250円、3時までは100円、といった感じで値下げしていけば、売れる確率は高まります。そのまま廃棄すれば100%店舗の損失ですが、赤字であっても損失は減らせます。値下げ目当ての客が買わなくなるというリスクがありますが、わざわざ夜中にまで待つ人はそんなにいないでしょう。これでフードロスも減らせます。食品だけでも導入してはいかがでしょうか?



