アメリカによるベネズエラ大統領夫妻拘束作戦があまりにも見事に決まり過ぎたために、独裁国家の独裁者はやられる側として戦々恐々としているでしょうし、逆に自分が侵攻する側としては「自分たちもやれる!」と意気込んでいるところもあるでしょう。
ベネズエラが今後、どのような未来を歩んでいくかはベネズエラ国民の意志と意思によります。アメリカの軍事力は重要なファクターですが、どんなにアメリカが望んだところでベネズエラ側が主体であることは変わりません。アメリカはこの21世紀に入り、イラクとアフガニスタンを一時は完全に制圧したにも関わらず、結局はアフガンでは民主化に完全に失敗して撤退し、イラクは混乱した情勢を収められていないように、ベネズエラの統治に深く関与しても失敗するだけでしょう。あくまでベネズエラ国民(と権力者)が選んだ方向に進んでいくでしょう。それが望ましい方向と限らないのは確かですけれど。
強硬手段によって独裁者を取り除いた結果、その国が独裁国家でなくなって民主化されるとは限りません。というか、大抵の場合はその後を別の独裁者が受け継ぎます。
それと同じように、外国勢力による軍事介入によって独裁政治を無くそうとしても、大抵はまた別の独裁体制が作られます。かつての日本、大日本帝国はGHQによって軍事独裁体制を覆されましたが、それ以前に、明治以来の立憲君主制が民主的素地を育んでいたからこそ、その後の民主政治の定着をもたらしました。
そういった素地が無い状態で、外国軍が独裁者を倒して、「さあ、今日から民主国家にしてやるぞ」と意気込んだところで失敗するのは当然でしょう。かつてのソ連崩壊後のロシアや東欧・中央アジア諸国では共和国を名乗る独裁国家が軒を連ねているのは、偶然ではないです。
同じように、民主国家の元首を略取したとしても、民主国家を勝手に作り変えることは不可能でしょう。はっきり言うと、中国軍が台湾の首脳を奪い取ったとしても、台湾政府は粛々と次の中華民国総統を選出するだけです。もし台湾全土を軍事占領したとしてもアメリカに亡命政府が生まれるでしょう。そこから復権するかどうかは知りませんけど。
少なくとも、75年以上もの間、中華民国として独立した行政府のもとで暮らしてきた台湾の民衆が、中華人民共和国の国民であることを武力によって認めさせるのは非常に困難です。それこそ、中国共産党政府が日頃からさんざん口にしている、抗日の歴史(あれもかなりの捏造がありますが)において、他国の軍隊による支配への抵抗というものが根強く存在し得るのです。20世紀前半の、清王朝末期から終焉、中華民国成立から分解、そして軍閥割拠という大混乱の状況にあっても、大日本帝国による支配には頑強に抵抗し続けていたという歴史は、そっくりそのまま中国軍による台湾支配が上手く行くはずがないという証明にもなるはずです。
ちなみに、宗教独裁国家とも言うべきイランでは、全土でデモが行われて緊迫した情勢になってきました。イランのトップは大統領ではなく、イスラム教のウラマーから選ばれる最高指導者です。この職にしろ大統領にしろ世襲ではないですし、そもそも「イラン・イスラム共和国」と名乗っていて選挙で大統領が選出されるのですが、野党への弾圧や国家のトップが大統領ではないことを考えると、1979年のイラン革命以降は事実上の宗教に基づく独裁体制を続けてきたと言って差し支えないでしょう。アメリカのトランプ大統領はデモに対する弾圧次第では米軍の介入云々という話もしていますけれど、ハメネイ師をマドゥロ大統領同様に奪取したり、あるいは追放や亡命させたりしたとして、イランは民主化されるでしょうか?
イランは、47年間のイスラム宗教国家の前は王政国家でした。パフラヴィー朝は1925年から1979年まで続きましたが、それ以前にも長短様々な王朝が続いてきました。今回のデモから政変や革命にまで至るかどうかは分かりませんが、そうなったときに王政が復活するのか、民主国家に生まれ変わるのか。かつてのパフラヴィー朝の元皇太子はアメリカから革命を煽っているみたいですけれど、もし願いかなって復権してもまた追い出されるんじゃないですかね。その未来では、デモで体制変更した成功体験が民衆にあるのですから。


